インタビュー
» 2006年05月12日 16時00分 UPDATE

写真家インタビュー:仕事はデジタルで、作品はフィルムで――池本さやか (1/3)

池本さやかさんは、水中写真を得意とするフリーランスの写真家だ。フィルムカメラからデジタルカメラまで幅広く使いこなす池本さんに、銀塩とデジタルのそれぞれの魅力や使い分けを語ってもらった。

[永山昌克,ITmedia]

 “写真のデジタル化”という潮流は、プロカメラマンの世界にも当然訪れている。写真家を生業としているだけに、従来の銀塩(アナログ)からデジタルへの移行というテーマには、むしろ真剣に向き合っているといえるだろう。そんな写真家のインタビューを通じて、デジタルフォトの世界の魅力を探ってみたい。

 第1回目は水中写真を得意とするフリーランス写真家「池本さやかさん」だ。

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池本さやかさん : フリーの写真家として多方面に活動中、個展も多数開催。主な使用機材は、銀塩はニコン「F6/F4/F3/ニコノスV」など、デジタルはオリンパス「E-1/E-500/E-300」など。池本さんのホームページはhttp://sayaka-ikemoto.image-i.net



――池本さんは、今年3月に「OLYMPUS E-500による女性写真家展」に参加されましたが、ふだんからデジカメを使っていますか?

池本さん: 仕事の場合は、今や80%以上の割合でデジカメを使っています。水中撮影の仕事なら、ハウジングケースに入れたオリンパス「E-300」を、それ以外の仕事ではオリンパス「E-1」などを使用し、撮ったデータをCD-ROMに焼いて入稿することが多いです。

 ただ、自分の作品として水中写真を撮る場合には、ほとんどがフィルムです。「E-500」を使う前提だったオリンパスの写真展は、デジカメで撮り、プリントまで仕上げた作品としては、実は初めてに近い体験でした。

――作品をデジタルで撮った感想は?

池本さん: ミズダコの写真は、水族館の人工照明を生かして撮りました。設定はほぼオートのままでしたが、デジカメの液晶上で見たときには、デジタルっぽい奇妙な色に見えて、まるで生き物じゃないような印象を受けました。そのイメージがおもしろいと感じたのですが、後からパソコン上でRAWデータを展開すると、もっと落ち着いた、より自然な色合いになっていました。さらにプロラボで印刷してもらうと、また違った色に仕上がっていたのは、予想していたとはいえ、思った以上の驚きでした。

 最終的には、キャリブレーションされたディスプレイをプロラボの人に実際に見てもらって、印刷したいイメージを伝えました。その表示が、自分の狙いに近い状態だったからです。フィルムの場合は、撮影したときの感覚やポジやネガを見た判断で、プリントの仕上がりをある程度予測できると思うのですが、デジタルでは比較的難しいですね。

 もちろんデジカメの液晶が目安にすぎないことや、プリンタや紙によって出力結果がまるきり違うことは分かっていましたし、もっとデジタルに慣れれば解決する問題かもしれません。とはいえ、デジカメ上で見た印象と、パソコンで見た印象、プリントアウトの印象の3つが、こんなにも違うものかとあらためて痛感しました。

photo The Size of the Galaxy-1 ミズダコの母親。卵をじっと抱えていた。山形県鶴岡市の加茂水族館にて。撮影2005年12月

――撮影時の印象を最も大切にしたいと考えますか?

池本さん: かならずしも、そうでもないです。銀塩では、フィルム選びの段階で仕上がりのイメージの方向性がほぼ決まると思いますが、デジタルの方が出力の仕方次第で、より多くの解釈や表現が可能ですよね。それはデジタルのメリットのひとつでしょう。ただし、自分にとっての指標や基準があいまいだと、逆に迷ってしまうこともあるかもしれませんね。

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