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メイド・イン・チャイナの秘密――オリンパス中国工場リポート・前編(2/3 ページ)

» 2006年06月08日 18時30分 公開
[永山昌克,ITmedia]

中国の地元に根差した工場運営

 工場を案内してくれたのは、オリンパスの現地法人、奥林巴斯工業有限公司の小松亨氏だ。小松氏は中国でデジカメの生産が始まったばかりの約3年前に赴任し、番禺工場の総経理を経て、現在は深セン工場の総経理、つまり最高責任者の立場にある。

 また番禺工場の現在の総経理は、飯田勝氏だ。小松氏と飯田氏にデジカメの製造工程や工場のシステムについて話をうかがった。


――数多くの日本企業が中国に工場を構えていますが、オリンパスの中国工場ならではの特徴は何ですか?

小松氏: 当社は1990年という比較的早い時期に中国に進出し、それ以降、設備投資や人材育成を積極的に進めています。その結果、今ではカメラ技術に関するトップレベルの生産体制を確立できたと自負しています。初期のころは日本で設計、開発したものをワンクッション置いてからこちらに移管していましたが、最近は製品の立ち上げや加工などをダイレクトに行えます。日本人がリードしなくても、ローカルのスタッフ主導で進行できる体制を築いたからこそです。

photo 奥林巴斯(深セン)工業有限公司の総経理 小松亨氏

小松氏: 中国に限らず海外の拠点では、その土地に根付いた会社にするべき、というのが当社の方針です。ものづくりの技術は現場の技術であり、ローカルのスタッフ自身が頑張らなければなりません。

 なぜなら、3〜5年といった期限のある日本人の駐在員ではどうしても定着しないからです。たとえ苦労して技術や思想を現地のスタッフやワーカーに伝えることができても、数年後に帰国してしまえば、またゼロにもどってしまいます。だからこそ中国人スタッフの育成には力を入れています。またその一方で、さらに改革すべき部分や、新しい生産技術などは、日本からどんどん取り入れるようにしています。

――技術流出の不安はありませんか?

小松氏: 当社のデジカメは、設計や商品開発を東京の八王子で行い、試作から部品の調達、量産、梱包、出荷までを中国工場で行います。また、生産技術の開発は長野の辰野工場で行っています。これら日本で開発した重要な技術については、しっかりとブラックボックスにして、それを展開する製造技術をこちらで膨らましています。例えば、当社が他に誇れる高密度実装技術の場合、実装そのものは中国工場で行いますが、そもそもの技術は辰野工場で開発を進めています。

 つまり、ここで作るものと日本で作るものを明確に分けることで、技術流出への対策を図っています。中国で製造することは、我々にとってはトータルのコストを日本の1/3〜1/5に抑えられる利点があり、中国にとっても雇用や経済の面で様々な利益があります。双方のメリットを満たした上で、結果として生産効率がアップすると考えます。

――フィルムカメラからデジタルカメラに移行して、工場の運営上で何が変化しましたか?

飯田氏: デジカメは製品のライフサイクルが非常に短く、フィルムカメラ以上のスピードや効率が要求されます。いかに通関や物流の効率を高めるかが重要なポイントのひとつです。例えば当社では、部品の原材料や電気パーツなどを香港経由で輸入していますが、昔は香港からこの工場まで2、3日かかったのを今では1日で届くように改善しました。

photo 右が奥林巴斯(広州)工業有限公司の総経理 飯田勝氏(左は副経理の大塚栄二氏)

飯田氏: これは、長年に渡って地元の役所や税関などと信頼関係を築いたからこそです。広州市の税関からは、優良企業に与えられる「誠信企業」の認定を受け、通関がスムーズになりました。また市や区の様々な規制は年々厳しくなっていますが、当社では技術や経済の貢献度に応じて与えられるランク分けの最優秀「A」をいただいています。

――深センの部品工場と番禺の組み立て工場のそれぞれの位置付けは?

小松氏: 深セン市で定められた最低雇用賃金は、経済特区ということでやや高く、690元になっていますが、番禺では574元です。そこで、深セン工場には付加価値の高い作業を集約し、積極的に設備投資をして部品を作ることに特化させています。一方、番禺工場では人手にかかわる作業、つまり製品の最終的な組み立てを行うようにしています。

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