コラム
» 2006年06月12日 09時30分 UPDATE

小寺信良:「補償金もDRMも必要ない」――音楽家 平沢進氏の提言 (2/4)

[小寺信良,ITmedia]

音楽出版会社とは何か

 普通我々一般人が思い描くアーティストとJASRACの関係は、アーティストがJASRACに著作権管理を委託していると思っている。だが実際にはその中間に、「音楽出版会社」というものが存在する。

 アーティストはこの出版会社に、自分の権利を「譲渡」する。そしてその出版社が、JASRACに権利を委託する、という二重構造になっている。出版会社に権利を譲渡するのは、そうしておかないと「委託の委託」という、権利の又貸し状態になってしまうからだ。

平沢氏: 例えばメジャーなレコード会社で活動してたとしますよね。レコーディングが終わるとある日突然、出版会社から契約書が届くんですよ。で、契約してくれと。契約条項にいろいろ書いてあるんですけど、契約書が送られて来た時点で、JASRACにもう勝手に登録されているんです。残念ながらアーティストは、著作権に関してまったく疎い。同時に私自身も疎かったがために、そういうものだと思いこんでいたわけですね。それによって、出版会社に権利が永久譲渡されている曲というのがあったりするんですよ。で、JASRACで集金されたお金は、この出版会社を通るだけで50%引かれて、アーティストへ戻るという構造があるんですね。出版会社は“プロモーションに努める”と言いますが、成果は保障せず、どんなプロモーションをするのか何度説明を求めても、回答しないことがほとんどです。大きなセールスが期待できるアーティストについては積極的に動きますが。

――通過するだけで50%天引きはすごい話ですが、この音楽出版会社というのは自分では選べないんですか?

平沢氏: ここが最近巧妙になってまして、レコード会社の中に出版会社ができているんですよ。ですからレコード会社の資金で使った楽曲は、そこの出版社に登録されて当たり前のような構造ができています。そこで私がおそらくミュージシャンで始めて主張したと思うんですが、なぜ私の権利が私の選んだ出版会社と契約できないんですかと、一回ゴネたことあるんですよ。ところがここの出版会社の言い分は、制作費を回収するためだというんです。


 これは一見まともな理屈に聞こえるが、実は違う。レコード会社が制作費を支払った対価として得るのは、著作隣接権に含まれる、原盤権である。著作権料は著作権者個人に支払われる対価であるが、音楽出版社はこの著作権を譲渡するように求めてくるわけだ。

 そうなるとJASRACが回収した著作権料は、権利を譲渡されて保持している出版会社が貰うことになる。アーティストには出版会社から、印税という形でお金を受け取る。50%天引きでだ。

 つまりレコード会社と出版会社のタッグは、原盤権も手に入れた上で著作権までもゲットし、その著作権料で制作費まで回収し、回収が終わっても曲が売れ続ける限り、著作権料としての利益を上げ続けることになる。

――音楽出版社というのは、必ず通さないといけないものなんですか?

平沢氏: これはもう動かせない構造として、存在するんです。JASRACの会員になるか、出版会社を通さないと、JASRACとそのほかの管理会社に対して支分権が振り分けられないんですね。e-Licenceというところは、それは理不尽だと考えているんです。そこでMCJPという出版会社を作っています。ここは単に支分権の振り分けを行なうだけで、50%という料金を取らないんです。

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