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デジタルで撮る身近な昆虫写真――水上みさき写真家インタビュー(1/3 ページ)

» 2006年07月03日 17時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]

 デジカメがフィルムカメラに勝るメリットのひとつとして、マクロ撮影の強さが挙げられる。フィルムのコンパクト機とは異なり、ファインダーのパララックス(視差)がなく、最大撮影倍率が高いので、小さなものを大きく撮るのが比較的簡単だ。もちろん簡単だからといっていい写真が撮れるとは限らないし、何をどう撮るかも重要である。

 今回のインタビューは、昆虫写真家の水上みさきさんに話をうかがった。水上さんにとって、デジタル化は自身の写真撮影に大きな恩恵をもたらした。また、トンボをはじめとして自分の好きな昆虫を撮り続ける姿勢は、プロアマを問わず写真好きの人に参考になるだろう。

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水上みさきさん: 千葉県生まれ。1993年から昆虫を中心に撮影を続け、1996年より写真家海野和男氏に師事。SSP 日本自然科学写真協会会員。同写真展委員。日本写真協会会員。写真展としては、1997年より毎年、日本自然科学写真協会SSP展に出品。1999年にイギリス アシュトン ナショナルドラゴンフライミュージアムにて海野和男氏と2人展。2001年に個展「足元のワンダーランド 虫たちの自由区」開催(銀座 富士フォトサロン)。2004年に個展「-湿地の妖精-ハッチョウトンボ」開催(市川市八幡市民談話室)。出版物としては、「川辺の昆虫カメラ散歩−多摩川水系250種の昆虫たち−」講談社+α文庫(共著)。「湿地に生きるハッチョウトンボ」<虫から環境を考える> 第一巻 偕成社など。



――水上さんは、今年3月に「OLYMPUS E-500による女性写真家展」に参加されましたが、「E-500」の使用感はいかがでしたか?

水上さん: フィルムカメラの時代には、オリンパスの製品をメインに使っていましたので、すんなりと扱うことができました。E-500だけでなく、その後「E-330」も購入しました。私が撮る昆虫写真の場合、地面に這いつくばって撮ることが多いので、小さくて軽いボディが非常にありがたいです。

 オリンパスのほか、ニコンやキヤノンのデジカメも使っていますが、マクロ撮影ではゴミやホコリが目立ちやすいので、ダストリダクション機能は特に重宝しています。ただ私の場合、AFよりもマニュアルでピント合わせをすることが多いので、オリンパスのフォーカスリングの感触には不満が残ります。それ以外の操作感や画質には満足しています。

――フィルムカメラからデジカメに移行したのは、いつ頃ですか?

水上さん: 今から約5年前にデジカメを導入しました。私の師匠である海野和男先生がずいぶん前からデジカメを始めていて、その魅力や実用性の高さは聞いていました。初期のデジカメにはレスポンス面やバッテリー寿命などに課題も感じましたが、今やフィルムカメラに遜色ない性能があると思います。最近では、仕事も作品もほとんどデジタルで撮っています。

――昆虫写真でのデジカメのメリットは?

水上さん: 動く被写体を撮っていますので、どうしても無駄撃ちの数が多くなります。でもデジタルなら惜しげなくシャッターを切れますので、最適なシャッターチャンスをとらえられる確率が高くなります。またE-330やコンパクトデジカメの場合には、液晶モニターを見ながら撮れるので、地面や水面のすれすれの位置から撮るのに便利です。

 撮影からプリントまでを自分の手でできることも、私にとっては大きいです。フィルムの場合は、ラボに出しても、狙い通りの出力を得るには手間がかかりますが、デジタルなら納得いくまで仕上げにこだわることができます。ただ、その分撮影後の作業時間は長くなりました。

――撮った写真はレタッチしていますか?

水上さん: 動いている昆虫を撮っていますので、必ずしも貴重なシーンがうまく撮れるとは限りません。なので、とりあえず様々な補正を試みることはよくあります。レタッチしていじってみるもの、ひとつの楽しみではあります。とはいえ、本当にいい写真はレタッチがあまり必要のない写真だと思います。

photo 「浜辺のスジグロカバマダラ」――樹液を求めてモンパノキに飛来したスジグロカバマダラ
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