FTTHやADSLがごく当たり前のものになって久しい。最近では、テレビCMで「トリプルプレイ」などと、かつての専門用語が飛び出すほどコモディティ化が進み、「ブロードバンド難民」といった言葉が懐かしく聞こえるような状況になった。
しかし問題がすべて解消されたかといえば、必ずしもそうではない。たとえば既築マンションなどでは配管スペースやコスト面の問題からインフラ整備がなかなか進まないケースもある。以前に比べれば条件が整ったとはいえ、物理的に新しい配線が不可能となれば、既に敷設されているメタル線(電話線)が頼りだ。今回は、下り最大100Mbpsの伝送速度と“トリプルプレイ”を可能にする「VDSL2」について、DSL関連チップベンダーのセンティリアム・コミュニケーションズに話を聞いた。
同社はこれまで、ADSLモデムやONU(FTTHの宅内端末)向けのチップを開発・販売していたが、新たにITU-T勧告「G.993.2」に準拠した「VDSL2」(Very high speed digital subscriber line 2)チップ「ARION」をリリースし、7月からサンプル出荷を開始する予定だ。
――最初に「VDSL2」の概要を教えて下さい。
VDSL2は、昨年5月にITU(国際電気通信連合)で勧告「G.993.2」として標準化されたもので、ADSL2/2+/2++を包含する仕様になっています。利用する周波数帯域によって複数のプロファイルが用意されており、これにはADSL用のものも含まれます。
ただ、国内ではQuad Spectrum技術などを利用した独自の47M/50Mbps ADSLが既にありますから、通信機器メーカーやキャリアと話をしてもアクセス回線に利用したいというリクエストは皆無ですね。すべて集合住宅やビル棟内を前提にした話です。
集合住宅向けのプロファイルは「30a」と呼ばれ、30MHzの周波数帯域を使用します。規格上の伝送速度は上り/下り最大100Mbpsと従来の「VDSL1」と同じですが、「ARION」ではループ長200メートルで上り下り最大125Mbps、300メートル以内であれば100Mbpsという検証結果が出ています。
たとえばNTT西日本は1Gbpsの光ファイバーを提供していますが、これをマンションに引いて構内をVDSL2を使用すると、IP-TV、VoIP、高速データ通信のトリプルプレイが快適に利用できるでしょう。もちろん光ファイバーの波長多重を利用するテレビなどは無理ですが、それ以外は光直収と比べても遜色のないインフラになると思います。
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