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BDソフトの本命、最新PHLエンコード画質の衝撃(1/3 ページ)

» 2006年07月14日 09時18分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 松下電器産業が先日北米で発表したBDプレーヤー「DMP-BD10」で、Sony Pictures Entertainment(SPE)の初期7タイトルを試聴する機会に恵まれた。先日リポートした「VAIO Type A」によるソフトウェアBDプレーヤーでの画質がBD初期タイトルの画質を正しく表現できていているかに疑問を持ったからだ。

 試聴は、大阪・門真市にあるAVC社の試写室にて、65インチフルHDのビエラ「65PX500」に同プレーヤーを接続して行った。

photo 北米で9月に発売されるBDプレーヤー「DMP-BD10」

 結論から言えば、初期7タイトルへの印象は大きく変わってはいない。

 しかしながら、今回の取材では同社が米カリフォルニア州に持つパナソニックハリウッド研究所(PHL)開発の最新H.264 High-profileエンコーダによる映像を確認できた。すでにその実力はCESにおける松下ブースの映像で確認していたつもりだったが、その当時よりも低いビットレートで、さらに良い画質を実現している。

 前回のリポートでは、HD DVDソフトの「Last Samurai」や「オペラ座の怪人」は85点、BDソフトの「Underworld」は90点……と書いてしまったが、PHLの映像を見てしまうと、もう少し点を辛くせねばならないと思うほどだ。同じ基準で採点するならば120点ぐらいを与えなければバランスが取れないかもしれない。

18Mbpsで“見た目はロスレス”のレベルに

 PHLエンコーダで圧縮した映像は、いずれも実際の映画から切り出してエンコードしたもの。これらタイトルは、いくつかのWebサイトにはBD向けタイトルとして記載されているが、まだ映画スタジオからの正式発表がないため、ここではスタジオ名、タイトル名ともに明かすことができない。

 しかし“次世代らしい”映像を求めているならば、決して期待は裏切らないだろう。CGアニメからSF、戦記ものまで、さまざまなタイプの映像を見たが、どれもマスターのクオリティが最高レベルというだけでなく、圧縮しているかどうかの判別が難しいほどに美しい圧縮に仕上がっている。

 CGアニメの場合はフィルム粒子が存在しないため、コンピュータ上でレンダリング結果をそのまま見ているかのような錯覚に陥る。ブロック歪みはもちろん、切り落としたようにシャープな輪郭の周囲にも、余分なシュートやノイズ類は全く見られない。圧縮しやすい素材とはいえ、全く驚くほどのクオリティだ。

 圧巻は戦記物の一本。鎖帷子を構成するリングの一つ一つが明確に描かれた上、その汚れ具合、微妙な表面のディテールが浮かぶ。その上、ギラギラと各リングに光が反射しているなど、MPEGが不得手とするシーンを抜き出したかのようなクリップだ。ところが、鎖帷子の描写はもちろんのこと、戦士の顔の汗、日焼けの具合、目の中に宿る力感など、あらゆる情報が一切の雑味を伴うことなく画面に溢れ出てくる。

 クリップはその後、万単位の軍勢が平原で対峙するシーンへと移っていくが、ここでも歪み感、ノイズ感を、何度見ても感じさせない。実はこの映像の前にSPEの初期BD7タイトルを試聴していたせいもあるだろうが、あまりの違いに唖然としてしまった。良い評価を与えていたUnderworld:Evolutionすら見劣りする。

 ほかにもいくつかのサンプルクリップがあったが、いずれもCESで絶賛された同じくPHLの平均20Mbps VBR(最大40Mbps)によるH.264 High-profileによる映像よりも、今回の方が明らかに進化している(念のため、CES時の映像も見せていただいた)。

 にも関わらず、実はビットレートは平均16〜18Mbpsへと抑えられているというのだから驚きだ。前述した戦記物に関しては、MPEG-2との画質比較用に15.5Mbpsで製作されたものだという。“見た目にはロスレス”といっても嘘にはならないレベルである。手元にある特別にハイビットレート(詳細不明だが30Mbps以上と見られる)で製作されたデモ用のMPEG-2のフルHD映像よりもさらに良い。

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