――K100Dの手ブレ補正機構にはどんな特徴がありますか?
畳家氏: ボディ側での補正、すなわちCCDを動かしてブレを打ち消すという発想そのものは、先行する他社メーカーと変わりありません。しかし、CCDをどうやって動かすか、その制御方法については各社それぞれのやり方があり、当社としては最も理想的と考える独自のシステムを取り入れています。
いちばんのポイントは、メカニカルな駆動ではなく、永久磁石とコイルという2つの部材だけで、CCDの動きをすべてをコントロールしていることです。磁力があって、そこに電気を流すこと、力が生まれまる。簡単に言うと、フレミングの左手の法則を応用しているのです。
畳家氏: この方式は、例えばモーターを使いガイドレールに沿ってCCDを動かす方式に比べて、応答性が速いメリットがあります。縦と横にガイドレールを設ければ、縦横以外の方向には動かないので、確かに制御は楽です。しかし、ガイドレールなどメカ部材があれば、多少のがたつきが生じたり、動き始めの動作がどうしても遅くなるデメリットがあります。その点、磁力で動かす方式なら、電気を流すと即座にすんなりと作動します。
――手ブレ補正は、どのタイミングで作動するのですか?
畳家氏: シャッターボタンを全押しした瞬間です。ボディ側の手ブレ補正は、レンズ側の補正とは異なり、ファインダー上では補正の効果を確認できないことが弱点です。しかし、だからこそシャッターボタンの半押しから、補正を作動させる必要はありません。シャッターボタンを押し切って、実際にシャッター幕が開くまでの間に素早く制御を行っていますので、補正に必要な電力消費を最小限に抑えています。
動きを順に説明すると、通電しない状態ではCCDは下にあります。手ブレ補正のオンオフを問わず、シャッターが開く直前にいったん真ん中に移動し、オンの場合はそこからブレ量に応じて細かく移動して補正を行います。オフの場合は、そのままずっと真ん中にい続けます。CCDを中央にい続けることも、電気でコントロールしているため、手ブレ補正オンでもオフでも消費電力はほんんど変わりません。メカ的な駆動や部材を排除したことで、がたつきが生じることなく、中心の精度を保つことができます。
――応答性に優れるとはいえ、手ブレ補正のない従来機種よりはタイムラグが生じませんか?
畳家氏: 一眼レフ機のシーケンスを大まかに言うと、シャッターボタンを全押しすると、ミラーアップが行われ、レンズ側の絞りを制御してから、シャッター幕が開きます。この一連の動作が、いわゆるレリーズタイムラグです。K100Dの手ブレ補正では、全押しからスタートし、シャッター幕が開く直前にはすでにCCDは中央に来ていますので、レリーズタイムラグには一切影響を与えません。そして、シャッター幕が開くと同時にブレに合わせた制御を行い、シャッター幕が閉じると同時に通電がなくなり、元の位置に静かに戻ります。
したがって、レリーズタイムラグや連写のスピードは、従来製品の性能を維持しています。ストロボの同調速度も1/180秒と変わりません。
――この手ブレ補正は独自に開発したものですか?
畳家氏: カメラ開発の歴史を振り返ると、露出を自動的に測るAE、ピントを自動で合わせるAFが実用化され、その次の大きなテーマとして手ブレ対策が20年近く前から挙がっていました。当社としては、これまで世に出せる製品はありませんでしたが、手ブレ補正の研究開発を長年進めていました。同時に、特許の侵害がないように調査も進めていました。
研究の当初はフィルムカメラの時代でしたので、レンズ側でのブレ補正にチャレンジしていましたが、大きな転換になったのはデジタル化です。デジタルならレンズ側ではなくボディ内のCCDを動かしブレ補正を行うことが可能です。しかも、そうすれば全レンズで補正が働くメリットがあります。
競合他社に遅れを取りましたが、今回ようやくK100Dとして手ブレ補正を製品化できました。要素開発のスタッフにとっては、長期間に渡って地道に取り組んだ成果です。結果的には他社に引けを取ることなく、むしろ上回る点も多い製品になったと思います。
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