各中継局は、駅(の光ファイバー)に接続するために25GHz帯を使うWIPAS(Wireless IP Access System)でアクセスリンクを構築。WIPASとは、800メートル以内なら80Mbps程度の伝送速度が出るFWA(Fixed Wireless Access:固定無線通信)向けの無線技術だ。
ちなみに中継局は、TXの線路上にあるわけではなく、実は防音壁の外……たとえば民家の屋上などに設置しているケースが多い。理由は、「線路と防音壁との間が狭く、中継局を設置することはできても、保守管理が行えないため」(NTT-BP)だ(以上、トリビア)。
列車のシステムは、先頭車両と最後尾の2箇所に、中継局との間でワイヤレス通信を行う設備が用意されている。ここにあるモバイルルータを介し、各車両のアクセスポイントすべてを無線LANで接続。さらにユーザーはそのアクセスポイントに無線LAN接続するわけで、まさに“無線LANだらけ”のインフラといえる。NTT-BPによると、列車内の“オールワイヤレス化”が、インフラコストの低減に一役買ったという。
移動する列車は、駅や中継局の通信エリアを通過する際にモバイルIPによる高速ハンドオーバーを繰り返す。NTT-BPによると、「小ゾーン間を短時間で切り替える技術とセッション維持が、今回の技術的なポイントの1つだ」という。
もう1つのポイントは、レイヤー2トネリングにより複数のVLANを収容できること。つまり、仮想的なネットワークを複数構築して、「Mzone」や「フレッツ・スポット」を共存させる。アクセスポイントはマルチESSID技術によって、それぞれのサービスに向けたESSIDを報知するため、ユーザーは自分が利用しているサービスのアクセスポイントに接続しているようで、実は共用のアクセスポイントを使っているというわけ。なお、NTT-BPでは「マルチESSIDには、まだ余裕がある」としているため、ほかのホットスポット事業者が参入する可能性もあるだろう。
昨年8月から足かけ1年実施してきたトライアルでは、モニターの数が右肩上がりに増えるという「通信系のトライアルでは珍しい現象」が起きた。これは、ユーザーの関心が高いことの現れだ。またインフラの整備とともにモニターの「満足度」が飛躍的に向上したというのも印象的。当初は約2割だった「満足」「ほぼ満足」という回答が、中継局の設置やトンネル内対策等のチューニングを行った結果、最終的に68%に増えたという。このことから、ホットスポットのような通信サービスでは、伝送速度よりむしろ“途切れないこと”が満足度に深く関係していることが伺える。
光ファイバーが本格的に普及しつつある現在において、1.5Mbpsという速度は、さほどインパクトのある数字ではないかもしれない。ただ、移動時間を有効に使えることを考え合わせると、確かに満足度の高いサービスといえるだろう。
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