もう1つの傾向としては、玩具というジャンルから飛び出しそうなくらい、リアリティを重視した本格派指向のものが挙げられる。ミニチュアピアノ「Grand Pianist」や、アニマトロニクス技術を駆使した猿人模型「APEMAN」などが好例だ。また、値段は手頃だが、エポック社の「TV-DARTS」もなかなか本格的でいい。
とにかく「おもちゃショー」でキッダルト商品は大いに盛り上がりを見せた。エアロソアラを自腹購入した筆者などは、年齢的な部分も含めて、まさに“キッダルト”商戦まっただなかにいるのだろう。ただ、ここまで紹介してきて何だが、個人的には「キッダルト」という言葉が好きではない。
理由を分析してみた。まず語感がいまいちで、しかもkidsとadultを組み合わせただけの和製英語(*1)。程度の低いダジャレが周囲の人を引かせるように、単純すぎる言葉遊びは評価が低いものだ。そして何より、言葉の組み合わせが、一昔前に流行った「adult children」を連想させる。
「キッダルト」が、業界限定のマーケティング用語であるうちはいい。玩具会社が「キッダルト市場にコミット」といったら、それは「お金を持っている人がたくさんいる、有望な市場に注力する」という意味で、株価は上がるかもしれない。聞き慣れない言葉に、マスコミも注目して製品を紹介してくれる可能性が高い。
しかし、言葉が一般化していき、商品やマーケットではなく、“玩具を買う大人”そのものを指し示すようになったら要注意だ。世の中に「子供っぽい服」や「玩具を欲しがる大人」を軽く見る人は多い。そして、頭の固い人たちほど、聞き慣れない言葉は自分の知識だけに照らし合わせて解釈しようとするもの。週刊誌やワイドショーが取り上げる頃には、言葉が一人歩きしているかもしれない。
仮にそうなったら、どんな影響が出るか。おそらく、筆者は帰省のたびに「歳を考えろ」と親に叱られる(今と同じか)。ユーザーが肩身の狭い思いをしたら、市場は育たない。“キッダルト”をプッシュしていくこと自体が、どうにも危ういマーケティング手法のような気がしている。
考え過ぎと言われるかもしれないが、目新しい造語で妙な注目を集めたりするより、昔ながらの「大人のホビー」のほうが良いのではないか。それが“キッダルト”代表としての意見だ。
*1Webで調べてみると、最近は英語圏でも「kidadult」と言うケースがあるようだ。しかし「大人びた子供」という意味だったり、はたまた「ニート」に近いイメージだったりと、あまりポジティブなニュアンスは見あたらない
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