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フルハイビジョンの真実麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2006年08月01日 12時20分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――本当の意味での“フルハイビジョン”とは?

麻倉氏: それは単にフル画素というだけではなくて、コントラストも“フル”、階調性も“フル”、色再現性も“フル”、ディテールの再現性も“フル”……、という具合にフルの意味がそれぞれ違うのですが、画質の円を書くと、すべての円形がおおきくなるようになってもらいたいですね。その意味では、まだ詳細にはチェックしていないのですが、松下のフルハイビジョン4兄弟はかなり期待しています。従来機のPX600シリーズでも、コントラスト、階調性、色再現性など画質の各要素が非常に高いレベルに達していたのですが、画素数だけが足りなかったのです。

――フルハイビジョンの50V型で実売60万円前後という価格もかなり驚きました。

麻倉氏: 松下の強みは、安くすることにプラスして製品に価値をつけていけることですね。垂直統合による圧倒的な製品開発力で、従来比で画質を向上させつつ、値段を安くできるのです。50V型のフルハイビジョン化により、液晶陣営に対して、大画面市場でのプラズマの優位性を宣戦布告したのでしょう。

 ただし、こうなってくると辛いのはパイオニアでしょうね。50V型のフルハイビジョン対応プラズマディスプレイ「PDP-5000EX」は、モニタータイプ(テレビチューナー非搭載)で実売105万円前後ですから。松下は“液晶叩き”をしたつもりでしょうが、結果的に“パイオニア叩き”になってしまいました。もっともパイオニアに関しては、大衆路線ではなく、「品格のある画質のスペシャル・ディスプレイ」という高級路線で勝負していくべきでしょう。

――松下のフルハイビジョン4兄弟では、600万円の103V型も視線が集まっています。

麻倉氏: 今年初頭の最大の話題だったのが、松下の103インチでした。それまでの松下に欠けていた“世界最大”の称号が、これによってもたらされたのです。私が初めて遭遇したのが、今年のラスベガスでのCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でした。CESは「大画面オリンピック」の会場で、2004年は韓国のサムスン電子が80インチで、2005年は同じくサムスン電子が102インチで、世界最大のディスプレイの栄冠を獲得していました。今年は松下電器がゲットしたのですね。1月4日に開催された中央ホールのブースでの記者会見会場には、右の壁に、白いヴェールが被ったプラズマテレビらしきものがあり、これは怪しいと私は、その近くに席を取ったんです。冒頭で、アメリカ松下電器の山田会長に紹介されて、ヴェールが外されると、そこに出現したのがなんと103インチのプラズマテレビでした。会場からは驚きの声があがったものでした。

photo 今年のCESでお披露目となった“世界最大”103インチ

麻倉氏: この“世界最大”は、50インチPDPを4面取りするマザーガラスを使って作られているのですが、プラス数インチは、マザーガラスのミミ(マージン)の部分まで使い切ることで実現しているのです。その開発力にも驚きますが、これを売るということの決断もすごいと思います。その価格については、CESでのインタビューでは10万ドルか5万ドルかで検討していると言っていましたが、後者できたことからも売る気十分ですね。

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