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フルハイビジョンの真実麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)

» 2006年08月01日 12時20分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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――100インチ超のテレビが創り出す世界とその可能性について教えてください。

麻倉氏: 100インチ以上になると、解像度としてはフルハイビジョンでも物足りなくて、4K2K(4096×2160)は必要となるでしょうね。すでに50インチでフルハイビジョンを実現しているので、技術的には簡単なことです。つまり、大画面で高解像度というのは、その下のサイズの技術のイノベーションになるのです。現行のフルハイビジョンソースに対してはアップコンバートになるわけですが、あの超絶の高画質技術である、ソニー DRC(Digital Reality Creation)などのテクノロジーを使えば、アップコンバートをテコに画質を飛躍的に向上させる道もひらけます。

 NHKでは2025年に8K4Kのスーパーハイビジョン放送をやりたいとアナウンスしてますし、NHK技研では50インチで4K2Kの基礎研究が完成しています。これを応用すれば、26インチでフルHDという流れも見えてきます。

 このような高解像度映像を送ろうとすると帯域の問題が出てきますが、なにも放送波で送らなくてもブロードバンド回線を利用するという手段もあります。そうなってくると、もはや“テレビ”というよりも“ディスプレイ”といったほうがしっくりくるでしょうね。

photo フルハイビジョン103V型プラズマVIERA。テレビというより壁ディスプレイ

麻倉氏: テレビとして普通の家庭で視聴するサイズは、65V型というのがひとつの限界だと思います。それから考えると、103インチはテレビではなく“壁”。壁掛けテレビというのが、これまでの目標でありましたが、これからは壁自体が映像を映し出すという時代に突入していくのです。例えば、高級億ションなどでは103インチを最初から壁に埋め込むというソリューションも考えられるのではないでしょうか。しかも、ブロードバンドで環境映像をサービスするおまけつきです。コンテンツとハードを一体にして売るのです。

 従来のテレビという概念ではなく、ディスプレイという概念なら、103インチを9面のマルチスクリーンにしたり、例えばハワイボタンを押すとハワイのシーンに変わるなど壁に映すにふさわしい新たなコンテンツも登場してくるかもしれません。ディスプレイを壁に見立てるというのは、視野角フリーな自発光のプラズマだからこそできる技です。

 フルハイビジョンの先には、このような豊穣な映像世界が広がっていることも知っておいてもらいたいですね。


麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント


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