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Blu-rayタイトルは「Dolby Digital Plus」を活用できるか?BDタイトル製作者とBDAへの公開メール(2/3 ページ)

» 2006年08月22日 22時43分 公開
[本田雅一,ITmedia]

互換性を重視したBDの音声フォーマット

 実際の製品では先行したHD DVDだが、フォーマットの草案策定はBD-ROMの方がタイミングとしては早かった。BDの音声フォーマットはDD+の仕様が確定する前から議論されており、実際のビジネスを行うにあたって重視されたのは、早期に実装しやすく、互換性も確保しやすい音声フォーマットだった。

 このため(BDタイトルの)DD+5.1音声には、必ずDD+のフル機能を用いた圧縮ストリームではなく、DDと互換性のあるストリームにしなければならないと決められている。既存の音声デコーダーに通した時にも、きちんとサラウンド音声を再生可能にするためだ。つまり、5.1チャンネルだけの場合、DD+の高音質な新コーデックは利用されない。

 DD+のコーデックが使われるのは、拡張ストリームとしてサラウンドバックの2チャンネル分が追加される場合のみ。この拡張ストリーム用のパケットはDDとの互換性が元々ないため、DD+コーデックを用いても問題はない。

 つまり5.1チャンネル分は旧式の(DVDは448Kbpsに対してBDは最大640Kbpsなので音質は多少向上している)まま、サラウンドバックだけが最新コーデックで収録されるのである。

 耳を疑う内容だが、ドルビーとBDA、双方の関係者に問い合わせたところ事実だという。これはいったいどういうことなのか。誰も気付かなかったわけではあるまい。

“ロスレスがあるからいい”とは限らない

 DD+ではなく、非圧縮のリニアPCMで収録されるのなら、それでいいじゃないかという意見もあるだろう。しかしそうとも限らない。

 現在、リニアPCMで音声を収めているBDタイトルを見ると、いずれも16ビット48kHzで収録されている。映画の音声は(最近のものは)ほとんど24ビット48kHzだから、分解能をやや落として収録していることになる。映画の場合、ダイナミックレンジが広いためレベルは低めに記録されていることも多く、たとえ圧縮されていても、分解能が16と24では24ビットの方が良く感じられる場面も出てくるだろう。少なくともTrueHDやDTS-HD Master Audioといったロスレス圧縮ならば、16ビットのリニアPCMよりは良い。

 ところがロスレス圧縮はすべてオプション扱い。つまりDTSなりDD、リニアPCMなりの音声トラックを入れた上で追加的に収録するほかない。将来、2層BD-ROMが一般になってくれば容量の問題はなくなるだろうが、1層ROMを採用するコンテンツが多い中では、ロスレス音声が映像のビットレートを圧迫する可能性も無視できない。

 比較的低いビットレートで効率の良く圧縮できるDD+は、ベーシックな圧縮コーデックとして非常に有益だ。またトランスコードが容易であるため、DDとの互換性を取りやすい。これを使わない手はなかろう。

 もっとも、現状のBDの仕様を元にすれば、洋画ではオリジナル音声をDDとロスレス(あるいはリニアPCMのみ)の両方で収録し、日本語吹き替えをDDという組み合わせが一般的になるのだろうか? スペック的には画質・音質の両面を重視するユーザーにも満足できるタイトルは作れるだろう。オリジナルがロスレスで収録されればそれで良いと割り切るのもいいが、ベーシックな音声コーデックとして、今一度、DD+のあり方について議論できないものだろうか。

 音質の違いというのは、意外にも映像ソフトの質全体に大きな影響を及ぼすものだ。パッケージソフトとして所有しようというバイヤーに対して、釈然としない気持ちを残すのは得策ではない。

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