さて、そんなにDD+は評価すべきコーデックなのか。実はこの記事を書くにあたって、DDとDD+の音質比較テストをドルビーラボラトリーズ日本支社の協力で行ってみた。
まずは一般的なDVD向けDD音声の448Kbpsストリームと、同一ビットレートのDD+を聞き比べた。いずれも圧縮されていることはパッと聞いてわかるが、比較するとDD+の方が中高域の情報量、音数が多い。DDにありがちな“音寂しい感じ”が薄れているのがわかる。
DD+のビットレートを768Kbpsにまで引き上げると、DDとの差はより明確。低域のパワー感が増加し、音の消え際が丁寧に描かれる。音がスパッと消えてなくならず、空気感を演出できるようになる。さらに1.5Mbpsまで引き上げる(ユニバーサルのHD DVDソフトが1.5Mbpsといわれている)と、さらに高域の情報量が増加してスピーカーの間にビッシリと音が詰まってきた。
映画用音声として考えると、768KbpsあたりのDD+はかなりリーズナブルな、使いやすいビットレートと感じる。絶対的な質では、もちろん1.5Mbpsの方が良いが、768KbpsあればDD+の良さをエンドユーザーもハッキリと実感できるだろう。圧縮率を考えれば使いやすいビットレートだと思う。
そうは言ってもBDタイトルでは使えないのでは? という声が聞こえて来そうだが、実は全く使える可能性がないわけではない。
ドルビーによると、DD+のエクステンションストリームには、コアの任意の音声ストリームを置き換える機能があるそうだ。つまり、コアに448KbpsのDDを入れておき、それをエクステンションのDD+ストリームで置き換えるのだ。DD+に対応していない機器では、そのままDDが再生され、DD+対応機器ではDD+ストリームが再生される。DD+ストリームだけで構成する場合に比べ、448Kbps分だけ損することになるが、実質、5.1チャンネルでDD+を利用できないという問題は回避できる。
ただし、BDの音声仕様では、こうしたエクステンションによるコアの置き換えが可能とも、不可能とも書かれていない(ドルビー側の実装仕様には入っているのだが)。このため、すべての機材で上記のような使い方ができるかどうかは不透明だ。
とはいえ、米国でBDプレーヤーが発売されているものの、日本ではまだまだこれから。PC用ソフトプレーヤーはアップデートで対処もできる。今からDD+の扱いについて、少なくともエクステンションでコアの6チャンネルを置き換えられるよう、明文化できないものだろうか? そしてコンテンツベンダーにおいては、是非ともこの問題にベストな手法で望んでほしい。
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