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拡張色空間「xvYCC」、普及の条件(1/2 ページ)

» 2006年08月31日 02時53分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は8月30日、動画用の新しい拡張色空間「xvYCC」の説明会を開催した。今年6月、xvYCCに対応した「HDMI ver.1.3」が正式発行したことを受けて実施したもの。その内容から、xvYCCが普及するための条件が見えてきた。

photo 説明を担当したのは、JEITA AV&IT機器標準化委員会に参加しているソニー・デジタルイメージング事業本部の加藤直哉氏(左)と三菱電機・映像入出力技術部の杉浦博明氏の両工学博士

 xvYCCは、2005年10月にIEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)で承認された色空間の国際標準規格。正式名称は「IEC61966-2-4」といい、自然界に存在し、人間の目が認識できるほとんどの“物体色”をカバーできる色空間を定義している。物体色の種類を示すマンセル色票(A・H・マンセルが考案したマンセルブックに示されている色票の数値目盛)に対しても「ほぼ100%」の表現が可能だ。

 一方、現在テレビなどで一般的に使われているsRGBは、ブラウン管の特性をもとに決められたもので、NTSCと比較しても72%程度の色域しかカバーしていない。マンセル色票に対して表現できる色は約55%に過ぎず、主に“高い彩度を持つ物体色”の表現が苦手だ――たとえば花びら一枚一枚の微妙な彩度の違い、エメラルドグリーンの海の波ごとの違い、波しぶきのディティール感といった映像のリアリティを左右する部分が表現できないという。

photo xvYCCで期待できる効果。一度体験すると従来の映像には戻れない

 実際、動画を撮影するカムコーダーには、既にsRGB色域を超える信号を撮影する能力があり、また液晶やPDPなど、ブラウン管以外の技術を用いて色再現域(色域)を拡張させた、さまざまな表示装置が市場に出てきている。しかし、現状ではテレビの色域がsRGBで制限されているため、カメラ側もsRGBの色域外になる色は「単純にクリップ(色域内の近い色に割り当てる)してしまうことを前提の画質設計になっている」。

 「従来のテレビシステムでは、本来なら明度や彩度の違いがあった部分が“ベタって”しまい、色鮮やかな物体の素材感や立体感が損なわれている。また、フィルム撮影の映画素材が持つ色の一部が再現できないこともあった」。 

 加藤氏は「静止画の世界では、既にsRGBを拡張したsYCC色空間がExif 2.2に採用され、ユーザーは意識することなく楽しんでいる。一方、動画信号においても、高彩度色の保存が可能な未定義の領域が存在している。それを有効利用することで、広色域データのやり取りが可能になる」とxvYCCの意義を説明する。技術的には、カラースペースを構成する「RGB原色点・白色点」「RGB-YCC変換行列」「量子化」といった要素は従来のままで、「光電変換階調特性」のみを拡張する(ITU-R BT.709で定義された階調カーブを従来の範囲外まで拡張)仕様。平たくいうと「使っていない部分を定義しただけ」で、色域が格段に広がるのがxvYCCの良いところだ。

photophoto 色空間の比較
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