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“騒音キラー”の効果は?――パナソニック「SV-SD800N」レビュー(3/3 ページ)

» 2006年09月01日 17時07分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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万能ではないノイズキャンセリング

 楽曲を転送すればリスニングが楽しめる。基本的な操作方法はシリーズ製品と変わらず、再生ボタン長押しで電源ON/OFFで、「M」ボタンを押せばメインメニューを呼び出せる。用意されているメニュー項目はシンプルで、「オーディオ」、「FM」「オーディオ設定」の3つだけだ。

 選曲するには「オーディオ」を選択してから「S」(サーチ)のボタンを押す。「50音検索」「全曲」「アーティスト」「プレイリスト」「アルバム」「印象」「マーク登録曲」の項目から曲が検索できる。このあたりのインタフェースは非常に直感的で、「S」が「サーチ」ボタンであることに気が付けば説明書なしでも利用できるだろう。

photophoto シンプルなメインメニュー(左)、「S」ボタンを押すと呼び出せる選局画面(右)

 ノーマル/S-XBS1(低音強調)/S-XBS1(さらに低音強調)/トレイン(電車モード)の4種類が用意されたEQと、リ.マスター/P.SRD1(バーチャルサラウンド)/P.SRD2(バーチャルサラウンドをさらに強調)の3種類が用意された音質効果も用意されている。リ.マスターは、高音域を補正することで原音に近い音を再現する圧縮音源の自動補正機能だ。

 音質の全体的な傾向もこれまでのシリーズ製品と同様で、押し出しのシッカリしたメリハリのきいたサウンドで、J-POPやギターメインのロックに向くように思える。カナル型ヘッドフォンが新採用された影響か、ハイハットを刻む音や柔らかな手首でスネアをたたく音、メインボーカルと同時に発声されているコーラスといった細かなニュアンスも伝えてくれる。

 最大の特徴であるノイズキャンセリング機能だが、これはリモコンに用意されているスイッチを入れると、いつでも任意のタイミングで適用できる。細かな調整は行えず、ON/OFFのみだ。仕組みとしては、ヘッドフォンに用意されている小型マイクから外部の音を拾い、その音に相反する波形(逆相位波形)を生成、同時に出力することで外部からのノイズを低減する。

photophoto リモコンとヘッドフォン(左)とヘッドフォン(右)。ヘッドフォンには小型マイクが内蔵されているが重さを感じることはなく、装着感は一般のカナル型ヘッドフォンと変わらない

 地下鉄で通勤中に音楽を聴きながらスイッチをオンにしてみたところ、スイッチを入れた直後にはあまり違いを感じず、ダイナミックレンジが一瞬狭くなったような印象を受ける。ただし、しばらくしてからスイッチを切ると予想外に周囲の雑音が大きなことに驚いた。

 完全に周囲の騒音をカットするような極端な効き目ではないが、確かに周囲の雑音を低減していることが確認できた。これならば電車内で“聞こえにくいから音量を上げる”ことはしなくて済みそうだ。

 リモコンからは周囲の音をヘッドフォンに出力する「モニターモード」に切り替えも可能なので、車内アナウンスを聞き逃したくない場合などには有効だ。ただ、周囲の音を拾い、それに反する波形を生成するという仕組み上、突発的に発生した騒音――例えば急な大声――に対しては低減を望めない。一定の騒音が継続的に発生する環境――電車内や飛行機内、エアコン室外機のそばなど――で最も効果を発揮すると考えるべきだろう。

 利用中に気になったことをもうひとつ。リモコンはノイズキャンセリング機能のON/OFF、モニターモードへの切り替えしかできないのだが、胸元や襟にリモコンをつけていると、音量調整をしようとして手を伸ばしてしまこともしばしば。多少サイズが大きくなっても構わないので、音量調整や再生/停止といった基本的な楽曲操作機能も搭載してほしかった。

ノイズキャンセリングを身近にする製品

 ポータブルオーディオプレーヤーという製品に(おそらく)初めてノイズキャンセリングという“騒音キラー”機能を搭載してきた本製品の実売想定価格は2万円前後。128MバイトのSDメモリーカードが付属し、大容量カードの価格も低下しているとはいえ、価格容量比でいえば他社製品より不利であることは否めない。

 ただ、ノイズキャンセリングヘッドフォンを単体購入することを考えれば明らかに割安であるし、ノイズキャンセリング機能のために乾電池などの電源を用意する手間もいらない。より高いノイズキャンセル効果を求めるならばオーバーイヤー型の製品(ボーズのQuietComfortなど)を購入するしかないが、「もう少し周りの騒音を低減できればいいのに」という要望には十分応えてくれる製品だ。

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