ITmedia NEWS >

HD映像を記録する「AVCHD」とはどんな技術か?小寺信良(3/3 ページ)

» 2006年09月04日 00時16分 公開
[小寺信良,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

現時点での現実的な解

 ソニー製AVCHDのビデオカメラでは、カメラ同梱のソフトウェアをインストールすれば、PC上でAVCHD記録の映像を編集し、12センチのDVDメディアへAVCHDフォーマットとして記録することができる。この場合、PCにBlu-rayドライブは必要なく、従来のDVDドライブで可能だ。特に10月に発売されるHDD搭載モデル「HDR-SR1」では、カメラ本体でプレイリスト編集を行なったのち、その結果をボタンひとつでPC上のDVDメディアへ書き出せるという。

 「バイオのBlu-ray Drive搭載モデルでは、AVCHDの録再に対応していきます。BDを搭載しないものでもCPUパフォーマンスが足りるものでは、極力対応していきたいと思っています。映像の再生はCore Duoの1.66GHz、Pentium 4では2.6GHz以上のパフォーマンスが必要ですが、焼くだけであればPCのパフォーマンスはほとんど関係しません」

 実際にAVCHDで記録したDVDメディアをPCにマウントしてみると、「BDMV」というフォルダ以下に、「BACKUP」、「CLIPINF」、「PLAYLIST」、「STREAM」というフォルダがある。まさにメディアとしてDVDを利用しているだけで、DVDビデオ規格とは全く違っている。むしろBlu-rayのフォーマットに近い構造だ。

 実際のところ、AVCHDのビデオカメラは「買い」なのか。HDのパーソナルコンテンツ記録フォーマットとして、AVCHDなのかBlu-rayなのかは、言ってみれば入れ物の違いである。現時点ではいくらBru-layが暗号化されているとは言っても、いやというほど普及してしまえば、いつまでもDVDメディアに固執するのは得策ではないと判断する時が来るだろう。ただBlu-rayもどれぐらいで十分と言えるほど普及するのかは、まだ実際にモノが出てきていないだけに見えないところだ。

 筆者の予測としては、いずれにしてもAVCHD規格は「ビデオカメラのHD映像をAVCで記録する」というフォーマットとして、スタンダードになるだろう。ただこれによるDVDメディアへの記録は、長期的に見れば2通りの可能性が考えられる。

 1つはBlu-rayの普及に伴って、そちらへクロスフェードする形。Blu-ray規格自体がAVCHD規格を内包すれば、容量の面でDVDよりもBlu-rayのほうがメリットがある。ビジネス的にもAVCHDはBlu-rayの普及・販促ツールという性格を持っているため、Blu-ray本体が乗り込んでくれば、席を譲る形になるだろう。

 もう1つの可能性としては、HDDやメモリーカードへのHD映像記録フォーマットとしての用途がメインとなり、光ディスクへの記録自体がフェードアウトするという形。現時点でもメモリーカードは最大4ギガバイトの容量があり、8センチのDVD+R DLの容量(2.6ギガバイト)よりも多い。Bru-lay規格がAVCHD規格を内包しなければ、これは起こりうるだろう。

 ただ現時点での現実的な解として、DVDメディアにパーソナルなHDコンテンツを記録するという方法は、非常に有用な手段であることは間違いない。Blu-ray陣営としても、再生するコンテンツが少しでも増えるのはメリットがある。

 ただセルコンテンツと違って、パーソナルコンテンツに賞味期限はない。それは同時に、半永久的にAVCHD記録DVDの再生をサポートし続けなければならないう重荷を自ら背負うという意味でもある。ソニーと松下以外のメーカーがいつまでライセンスフィーを払い続けてこれのサポートを継続するかは、未知数だ。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.