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ワイヤレスHDMI、登場間近

» 2006年09月11日 20時08分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 米Tzero Technologiesとアナログ・デバイセズは9月10日、共同でワイヤレスHDMIのデモンストレーションを公開した。UWBとJPEG2000符号化を組み合わせて映像伝送の安定性を増した「新しいソリューション」だ。ハイビジョンTVや次世代DVDプレーヤー、ゲーム機などへの導入を目指す。

photo 今回は評価ボードを使った動作デモンストレーションが行われた。手前にある送信機でHD DVDプレーヤーの再生動画を伝送中

 Tzeroが6月に発表したUWB(Ultra-WideBand)チップセット「TZ7000」とアナログ・デバイセズのJPEG2000エンコーダー「ADV202」を組み合わせたワイヤレスHDMIソリューション。720P/1080iまでのHD映像をリアルタイムにJPEG2000変換し、マルチチャンネルのオーディオとともに無線伝送する。

 UWBチップは、6月のときと基本的に同じで、3.1G〜4.8GHzの広いバンド幅を使い、最大480Mbpsの伝送速度を実現する(ワイヤレスHDMIでは、帯域を3分割して3つのストリームを同時に伝送可能にするため、ハイビジョン映像1つあたりでは約160Mbps)。伝送距離は約10メートルで、壁越しの伝送も可能だ。

photophoto 送信機のリファレンスボード。UltraMIMO技術を使用するため、写真のアンテナにくわえ、逆側にもう1本のアンテナ端子を備えていた(左)、背面にはHDMIとコンポーネントの入力端子(右)

 JPEG2000符号化を行う理由は、MPEGのGOP(Group of Picture)のように、連続したフレームをまとめて圧縮する方式が、不安定な無線伝送に適さないためだ。通信エラーが生じたとき、「連続する15〜20フレームに影響を与え、回復するのに1.5秒ほどかかってしまう」(Analog Devices,inc、アドバンスド・テレビジョン・セグメントのBill Bucklenディレクター)。

 一方、もともと静止画用の高画質圧縮技術として登場したJPEG2000は、動画の各フレームを独立した形で圧縮する。このため通信エラーが発生しても、ほかのフレームに影響を与えず、画面の乱れを最小限に抑えることができるという。

 パケットエラー率は、有線LANと同レベルの10のマイナス8乗(1億分の1)。これは2時間の映画を見ているうちに、1回パケットロスが起きるかどうか、という水準だ。レイテンシの低さも特徴で、同社では「リアルタイム性の求められるゲーム機も重要なマーケット」としている。

 HDMIはバージョン1.2a対応だが、解像度だけは720P/1080iまで。1080Pのサポートは、「次世代チップで実現する予定だ」。また既に一部メーカーが導入しているCEC(Consumer Electronics Contlol)に対応しており、そのほか16bitカラーなど新フィーチャーを含むHDMI 1.3についても「メーカーの対応状況と要望次第で対応する」とした。

 同社では、9月中にサンプル基板を各セットメーカーに提供する予定だ。早ければ年内にも対応製品が登場し、2007年1月のCES(Consumer Electronics Show)では“広範な採用と展示”が行われるという。

 「今回のリファレンスデザインは、さまざまなフォームファクターへの適用が可能だ。まずはテレビやプレーヤーにプラグイン(外付け機器)する形が考えられるが、送受信機のセットが店頭で200ドルを切る程度の“アグレッシブな値付け”になるだろう。もちろん、究極的にはテレビやプレーヤーに内蔵されることを目指す」。

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