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第3回「そのテレビに未来の拡張性はありますか?」薄型テレビの賢い選び方

» 2006年09月20日 23時00分 公開
[ITmedia]
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第2回「テレビ購入時に必要な3つの要素」

“賢いテレビ選びのコツ”を紹介する連載の第2弾。テレビを構成する要素は数あれど、購入時の判断に必要な要素として「映像処理回路」「パネル」「チューナー」の3つに注目したい。


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第1回「いまこそ買い時! 薄型テレビ選びのコツ」

値ごろ感が高まった薄型テレビ。もはや“買うべきか、買わざるべきか”の時期は過ぎている! だが薄型テレビは多種多様で、選び方もブラウン管とは大きく違う。新時代における“賢いテレビ選びのコツ”を連載で紹介する。



 以前までは、テレビには通常の黄・赤・白の3点セット(コンポジット映像、および、ステレオ音声入力用のRCAピンジャック)、あるいは、丸いコネクタのS映像入力端子がとにかく多ければよかった。しかし、現在ではこれらの入力端子はむしろ余ってしまう傾向にある。ご存じのとおり、なにも接続すべき機器が減ったわけではない。逆に増えてはいるものの、その多くはコンポジット/S端子で接続可能なNTSC準拠の標準品質ではなく、1080i、あるいは720pという高品位映像を取り扱うようになっているためだ。

photo アナログ映像信号を輝度(Y)と色差(Pb、Pr)の成分に分けて伝送する“コンポーネント端子”

 こうした高品位映像を外部機器からテレビへと入力するには、いくつかの手段がある。まず、かなり以前から利用されていたのが、コンポーネント接続だ。アナログ映像信号を輝度(Y)と色差(Pb、Pr)の成分に分けて伝送するため、本来は3本のケーブルと、RCAピンジャック3基が1組になった“コンポーネント端子”を利用する。

 ただ、日本では独自規格として、D端子がすでに普及している。これは映像信号自体はコンポーネントのままだが、端子・ケーブルが見かけ上は1基・1本にまとめられており、さらに、画面表示比率などの識別信号も一緒に伝送可能だ。少し注意すべきなのは、D端子があるからといって、必ずしも高品位映像の入力に対応するわけではないということだ(コンポーネント端子も同様)。入力可能な映像信号は、D1=480i、D2=480p、D3=1080i、D4=720p、D5=1080pと表記され、たとえば「D4対応」であれば、基本的にはD4までの全信号に対応している。

photo 日本で普及しているD端子

 国内各社製品の仕様をざっと眺めてみると、「D4対応のD端子を2基装備」した製品が圧倒的に多いようだ。主な例外としては、ソニーでは液晶テレビ「BRAVIA X2500」シリーズが「D5対応」をうたっており、パイオニア「PUREVISION」ではD4を3基装備。さらに、日本ビクター「液晶EXE」ではD4対応端子1基に加え、コンポーネント端子を1基用意している。

 また、主に海外で市場展開しているメーカーでは、当然ながら、コンポーネント端子のみを装備する製品も多い。しかし、最近ではサムスンの液晶テレビのように、日本向け仕様として、複数のコンポーネント端子のうち1基をD端子へと換装したものも結構見受けられる。

今後はHDMIを装備しているか否かではなく、何基装備しているかが重要に

 いずれにせよ、コンポーネント映像系入力端子の平均的な数は2基ということになるのだが、これで足りるだろうか。なんとなく心許ない気がするかもしれないが、実際にはこの端子ですら、コンポジット/Sと同様に存在価値が薄れつつある状況だともいえる。というのも、デジタル放送対応DVD/HDDレコーダーを中心に、“HDMI接続”が一般的になってきているからだ。

photo これからのテレビに不可欠なHDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子

 HDMI(High-Definition Multimedia Interface)は、PCと液晶ディスプレイの接続に使われているDVIをベースにつくられた規格で、映像信号(YUV、またはRGB)のデジタル伝送が可能だ。さらに、デジタル音声(S/PDIF)も同時に扱えるため、映像と音声を1本のケーブルで接続可能で、ユーザーにとっても扱いやすい仕様といえるだろう。コネクタはD端子やDVIよりも小型で、抜き差しも比較的スムーズに行える(PCのUSBコネクタのような感覚)。

 つまり、HDMIを利用すれば、外部機器との接続でも映像品質の劣化をあまり気にしなくてすみ、さらに、接続もシンプルかつ容易というわけだ。そのため、前回書いたような、デジタルチューナー非搭載テレビとデジタル放送対応HDD/DVDレコーダーを組み合わせた“低予算セット”を選択する場合でも、テレビ側にHDMI端子が搭載されていることが望ましい。それさえクリアしていれば、チューナー内蔵型ではなくても、少なくとも昔のプラズマテレビでは主流だった“セパレート構成”(パネルとチューナー/コントロールユニットが分離)と同様の品質・使い勝手は確保できるだろう。

photo HDMIケーブル(左)はD端子用ケーブル(右)と比べて非常に小型で使い勝手がいい

 また、HD DVD、BD(Blu-ray Disc)といった次世代光ディスクの普及が進むにつれ、HDMIの重要度はさらに増してくる。前述した特徴のほかにも、HDMIには重要な要素が含まれている。それは、コピー保護システムを実現するための暗号化伝送(HDCP=High-bandwidth Digital Content Protection)への標準対応だ。

 ユーザーの立場では、コピー保護機能の必要性を感じることなどはなく、むしろ、使い勝手の面だけを考えれば、ないほうがありがたいのだが、映画配給会社などの映像提供元はこれを重要視している。実際、以前には「次世代光ディスクでは、高品位映像のアナログ出力を全面的に不可に」という動きもあった。現時点ではとりあえず棚上げした格好となっているが、2011年以降に再検討されるかもしれないという状況だ。また、全体としては特に制限を行わないと決まっても、映画などのタイトルによっては「アナログ出力不可」の設定で出荷されるものも出てくるかもしれない。

 また、PC向けにはHDMI端子を装備したグラフィックスカードがすでに登場しており、PlayStation 3にもHDMI端子装備モデルが用意される。今後は「HDMIを装備しているか否か」ではなく、「HDMIを何基装備しているか」が重要なポイントになってくるだろう。

 現状では1基のみという製品もまだまだ多いが、各社の新製品では“2基装備”が大半を占めており、東芝「REGZA Z2000」シリーズや、ソニー「BRAVIA X2500」シリーズのように、3系統のHDMIを備えた製品も出てきている。HDMIスイッチ機能を備えた切替器やAVアンプを使う手もあるが、追加コストや品質の面を考えると、やはり本体に装備しているほうが望ましいといえるだろう。

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「薄型テレビの賢い選び方」特集ページ

放送のデジタル化、液晶/プラズマなど薄型ディスプレイの台頭、ハイビジョンの普及など、テレビを取り巻く環境はここ数年で大きく変わった。テレビ製品の選び方も、ブラウン管時代とは大きく違ってきている。新時代における賢いテレビ選びのコツとは?


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