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“ケータイでプレゼンテーション!”にリアリティはあるか?!プロフェッサーJOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと」!(4/4 ページ)

» 2006年09月26日 12時06分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 本体の両側面には、USBポートが各1個装備されており、W-ZERO3などの機器はこれらUSBポートのいずれかに接続する。Pitch DuoをW-ZERO3に接続するに前に、W-ZERO3には2つのソフトウエアの導入が必要だ。最初のソフトウエアは、W-ZERO3とPCとのデータ交換を行うための「ActiveSync」と、Pitch DuoとW-ZERO3との連携を実現するために必要なデバイスドライバーを、適時切り替えるためのユーティリティ・ソフトウエア「USBConfig」の導入だ。

側面のUSB入力端子にW-ZERO3を接続してUSBConfigをPitch Duoに設定

 出荷時のW-ZERO3はActiveSyncのみが動作するように設定されているので、まずActiveSyncを使用して、Pitch Duo付属のCD-ROMから「USBConfig」をW-ZERO3側のメモリに導入する。導入が終わり、USBConfigを起動すると、「RNDIS」(ActiveSync)と「Serial」(Pitch Duo)の切り替えを選択できる画面が表示される。

ActiveSyncとPitch Duoを切り替えるユーティリティUSBConfigの画面

 外部の大型TVやプロジェクターを使用する時には、Serial(Pitch Duo)を選択し、PCからW-ZERO3側にファイルの転送やソフトウエアの導入、スケジュール等の同期を行うには、RNDIS(ActiveSync)に切り替えることで、両者を自由に切り替えできるようになる。

W-ZERO3のTop画面をPitch Duo経由で自宅のプラズマTVに写してみた

 2番目の導入ソフトウエアである「QuickPoint」は、W-ZERO3と外部ビデオ機材でフルスクリーンのプレゼンテーションや、プレゼンテーションのスタート・ストップ、ページ送りや戻り、ページ配列替えを行うために必要なソフトウエアだ。またW-ZERO3上で、プレゼンページのテキスト表示、ページのサムネイル表示、指定したスライドの表示・非表示の設定、等、PC上のパワーポイント等でも使い慣れた多くの機能をW-ZERO3上で実現できる。

 また、QuickPointは、PC側にあるPowerPointファイル(.ppt)をActiveSyncを経由してW-ZERO3側に転送する際に、自動的にPitch Duoで扱える専用ファイル・フォーマット(.pit)に変換を行う。

 高速なUSBケーブルでの接続とはいえ、毎回、表示するページ画像をW-ZERO3側からプロジェクターに接続されたPitch Duoに転送していたのでは、パフォーマンスが心配だ。と考える読者も多いだろう。

 しかし、実際には、変換されたページファイル(.pit)は、プレゼンテーションのスタート時点で、全ページがPitch Duo側に転送され、W-ZERO3は、あたかもリモコン装置のように、目的のページに対する、ページ送りや戻りのシグナルを送るだけなので、プレゼンテーション画面は極めて快適に動作し、多くの聞き手は、これがケータイ電話によるプレゼンテーションか!と驚くはずだ。

あまり意味はないが、ゲームも大画面で出来るW-ZERO3はリモコンみたい

 W-ZERO3とPitch Duoのコンビネーションは、スライド表示の切り替えの快適さに重点を置き企画開発されたはずだ。そのため、プレゼンテーション・ページのプリ・フォーマット変換や、プレゼンスタート前のファイル転送処理は、パワーの少ないハードウエア機器の組み合わせでも、PCレベルの簡単でスピーディなプレゼンテーションをいとも簡単に実現してくれる。

 しかし、残念だが、PCプレゼンテーションでは実現している動画やアニメーション再生の機能はサポートされていない。個人的には、アニメーションを多用したプレゼンテーション・スライドを作った時期もあったが、昨今はその傾向も減り、筆者にとっては大きなマイナス要素ではない。

 多くのビジネスマンや企業が、今回ご紹介した「ケータイでプレゼン!」の採否を考える場合、その分岐点となるのは、全くモバイルPCを持たずに顧客に向かう場合、土壇場での新しいスライドの作成・追加ができないことだろう。予測できる修正やスライドの配列を変える程度のことなら、いくつかのストーリー、ページを予め作り込んでおき、顧客に向かう途中で、配列替えや表示・非表示を選択することで対応は十分できるだろう。

 もし、貴方が、部下や有能な秘書を持つ身なら、W-ZERO3で会社に電話をして、会社のPCの中にあるプレゼンテーションファイルに変更を加え、pitフォーマットに変換された新しく最適化されたプレゼンテーションファイルを、メールの添付資料として自分宛に送ってもらえば完璧だ。PHS通信機能のあるW-ZERO3ならそれほど多くの時間を必要とせず目的のファイルを手に入れて、無事客先でのプレゼンテーションを乗り切れるだろう。

インターネットにアクセスしてWebもメールも普通に大画面で見られる
実際に液晶プロジェクター経由で壁面に投影されたプレゼンテーション
リモコン代わりとなるW-ZERO3esの画面にはサムネイルなどを表示可能

 もしあなたがモバイルの達人で、ネットワーク事情にも明るいなら、遠隔地からW-ZERO3で、オフィスの自分のPCにログインし、遠隔操作でパワーポイントを起動し、必要な修正を加えて、自分宛にメールを出すなんてこともきっと可能なのだろうが、これは、ごく普通のビジネスピープルの域を逸脱している。

 過去の筆者の短い経験からも、「ヤリ過ぎること」と「何とかできた成功体験」は、ごく普通で確実なオペレーションを危うくするリスクを高めること以外はなさそうなので、趣味の範囲に留めておこう。“できる”と“便利”は違うことを理解できることはリスク回避の基本だ。

 「楽をする」ことは、何事においても工夫とリスクが付きものだ。10年以上昔、筆者がオフィスに出社せず、出来たてほやほやの「ケータイ通信ネットワーク」と「モバイルPC」だけで過ごした数カ月間の「バーチャルオフィス」生活も同じだった。

 「ケータイでプレゼン!」は、PCで目覚め、モバイルPCで拡大したビジネスピープルのワーキングスタイルを、より小さく軽量なモノで革新できる世界へ導き、変革させる大きな起爆剤となるかもしれない。究極の目標は、言うまでもない、手ぶらモバイル、手ぶらプレゼンテーションなのだ。「W-ZERO3」と「Pitch Duo」の超軽量コンビネーションは、筆者を目標に向かって一歩も二歩も近づけてくれた。

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