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本当にSEDは世に出てくるのかCEATEC JAPAN 2006(3/3 ページ)

» 2006年10月04日 09時25分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 実は業務用にSEDを求めるニーズは、潜在的に非常に大きい。

 放送波で送られる映像、DVDや次世代光ディスクで販売されるセルビデオなど、あらゆる映像は業務用マスターモニター(具体的にはソニーBVMシリーズ)のEBU蛍光体の特性を唯一の“拠り所”として作られている。

 ところがBVMシリーズは最大でも37インチまでしかなく、当然ながらアナログ表示。色に関してはアテになるが、デジタルのフルHDソースが持つ精細感は表現できない。では液晶やプラズマではどうか? というと、これらのディスプレイはEBU蛍光体のブラウン管とは異なる色特性を持つ。今のテレビは、EBUで作られた映像ソースを、それらしく表示するように映像回路側で調整を行って表示している。

 毎年1月にハリウッドで映画スタジオなどの取材を行っているが、映像制作の現場でよく聞くのが「拠り所となる正しい色を正しい階調で見せてくれる、フル画素の固定画素ディスプレイがない」ということだ。

 今回のデモで見せられたような、圧倒的な階調と自然な色再現、それにフルHDならではの高精細な描写は、まさに業務用ディスプレイとして求められる要素である。東芝は現在、映像製作用の業務機材を開発する部隊を持っていないが、これだけの性能があるならば、是非とも世界中の制作プロダクションや放送局を相手にしたビジネスも行うべきだろう。

 業務用ディスプレイで品質をさらに磨けば、それは民生用のパネルにもフィードバックされ、また一定以上の市場を確保することで量産時の歩留まり工場や新しいプロセス、製造ラインの開発へと投資できるプラスのサイクルを作ることができる。

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 「映像制作者たちからも、ブラウン管の代わりに業務用で使えるSEDディスプレイが欲しいという強い期待は受けています。いつか、その期待に応じられるようにしたい。ハイビジョン放送が当たり前になり、フルHDの映像がパッケージ製品として流通しはじめました。やっと普遍的にハイビジョン映像が流通し始めたこの時期に、コンテンツ製作者の表現の拠り所となるディスプレイを、やっと見てもらえるという気持ちはあります」(森氏)

 ただし、もちろん一般コンシューマーに向けても、業務用とは別の可能性を追求して欲しい面はある。

 その点に関して森氏は「世の中にはSEDの画質でなければならないと言っていただけるお客様もいます。当初出荷するSEDパネルの数は限定的なものです。SEDじゃなければイヤだというお客様の手元に、きちんと届けられるようにしたい。この世に存在しなかったディスプレイを出すのだから、これを大事に育てていきます。なぜ、液晶やプラズマを東芝は開発しなかったのか。固定画素ではSED以外の方式でやりたくなかったからです。その理由、想いは、きちんと消費者に届けます」と結んだ。

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