ITmedia NEWS >

躍進するペンタックスの意欲作――「K10D」の開発者に聞く(前編)永山昌克インタビュー連載(2/3 ページ)

» 2006年10月30日 19時41分 公開
[永山昌克,ITmedia]

新開発の画像処理エンジンPRIMEとは

――サムスンテックウィンとの共同開発はあったのでしょうか?

畳家氏: もともとK10Dは当社の製品として開発を進めていましたので、完全な協業というほどではありませんが、ソフトウェア関連でサムスンテックウィンのエンジニアの方が一部のコードを書かれています。そもそも共同開発はお互いの得意分野を生かそうという狙いです。したがって当社が得意とするメカや光学系などのハード面はペンタックスのオリジナルといえます。

――K10Dに1020万画素CCDを採用した理由は?

畳家氏: 上位機という位置付けを考慮すれば、610万画素よりも高い画素数のニーズは確実にあると考えます。従来のK100Dは、ユーザーの使われ方としてA4印刷にちょうどいいという狙いでしたが、そこから抜け出た写真が好きな方の中には、画像をレタッチしたり、トリミングしたりする人も多いでしょう。また、先ほどはプロユースはあまり狙っていないとは言いましたが、これまで610万画素のカメラを展開する中で、一部のプロの方から1000万画素以上でなければ入稿データとしては不足するという声もありました。

 ただし、1020万画素を使ったからいいカメラだよ、という考え方は絶対にしたくありません。我々は自社でセンサーを開発しているわけではなく、画素数の数字はセンサーのメーカーに依存せざる得ない面があります。だからこそ、単に高画素で終わるのではなく、画像設計に対する独自のアプローチが重要だと思います。

 お客様がK10Dに何を期待するかを考えれば、第一に写りのよさでしょう。それに応えるため、我々として最大限のことをやろうと考えました。具体的には、A/Dコンバーターを22ビット化したり、全体の処理を高速化するために、新しい画像処理エンジンを使ったことなどです。それらを総合的に判断してK10Dの仕様を決めました。

――新しいA/Dコンバーター、新しい画像処理回路はどんなものですか?

畳家氏: まずCCDから画像を作り出すまで流れを簡単に説明しましょう。CCDは、レンズからの光を受け、光の情報を電気信号に変える働きがあります。このことは、どのメーカーのカメラも同じです。そして、光の量に応じてCCDがはじきだすアナログの波形を、A/Dコンバーターがデジタル変換し、画像処理エンジンへと送り込みます。

 RAWデータを作るには、最低限12ビットの階調があれば画像にはできますので、これまでの一般的なA/Dコンバーターは12ビット処理、一部のメーカーでは14ビット程度のものを使っていました。しかしK10Dでは、アナログの波形が持つリニアな出力特性をできるだけ細かくデジタル化し、なるべく多い情報量を持って処理回路へと転送するために、22ビットのA/Dコンバーターを新採用しました。我々独自のコントロールで画像処理を行う狙いです。

 RAWデータというと「生」という意味なので、画像処理をしていないと誤解されることがありますが、実際にはセンサーから出たデータそのままではありません。絵として作られたデータであり、各メーカーの作画の意図がそれぞれ込められています。K10Dでは、22ビットという圧倒的な情報量から、最終的にRAWなら12ビット、JPEGなら8ビットに落とす過程で、どういう情報を取り込むかを特に重視しています。例えばハイキー調の写真なら、ハイライトの描写がポイントになりますので、その部分の階調を豊かにするようなコントロールです。

 ただし22ビットの情報を処理するには、それに見合った高速な画像処理回路が必要です。そこで、より高速処理ができる新しいプロセッサーとして新画像処理エンジン「PRIME」を開発しました。

 我々は初代の*ist D以来、約3年ほど画像処理のプロセスを研究開発しています。その間エンジニアからの要望として、もっと微妙にパラメータを調整できれば、よりよい画像を生み出せるという声が多数ありました。それを機能として最初から盛り込み、計算によっていっそう繊細な表現を可能にしたのがPRIMEなのです。

 もちろん、こうした説明はメーカー側のウンチクのようなもので、肝心なのは結果として出てきた絵の良し悪しです。ご紹介できるサンプル画像はまだ少ないですが、例えば当社のホームページに掲載した作例の、ハイライト部やシャドー部などの階調表現を見ていただければ、データ化の片鱗を感じてもらえると思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.