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今、明かされる“モミモミ”の歴史(2/2 ページ)

» 2006年12月05日 07時44分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 ロッキンローラーの教訓か。翌年から同社のマッサージチェアは重厚なスタイルに傾倒する。1986年の「モミモミ肩聖(けんせい)」(EP563)はソファ型。1987年の「モミモミ肩聖(けんせい)タタキ」(EP567)は、足までほぐせるオットマン一体型だ。EP567は施療範囲の拡大と高級家具感覚の“ラウンジチェアタイプデザイン”で人気を博し、販売台数13万5300台のヒット商品になる。価格は22万円。

photo モミモミ肩聖シリーズ。高級家具感覚のラウンジチェアデザインが一世を風靡した

 1990年代に入ると、マイコン制御とチェア部の電動化が進み、高級機が相次いで登場。1990年の「ザ・モミモミ」(EP593)は、電動リクライニングや電動脚マッサージャー付きの贅沢仕様だ。価格は50万円。

 さらに1993年の「ザ・モミモミ達人」(EP594)では圧力センサーや自動コースプログラムを搭載。マッサージ椅子のコアといえる“もみ機”は3つのモーターを備え、きめ細かなもみ味を実現した。価格は60万円。機能がリニアに価格に反映される時代に入った。

都会進出

 重厚長大路線をひた走っていたナショナルのマッサージチェアだが、1994年8に1つのエポックメイキングな製品が投入される。それが「アーバン」(EP578)。その名の通り、「大きなマッサージチェアは、マンションに設置できない」という都市部在住者からの意見で生まれたコンパクト機だ。機能美溢れる洗練されたフォルムは現在でも新鮮に映る。

photo 「アーバン」はTV CMもカッコよかった。当時まだ20代前半だった筆者も本気で購入を考えた

 アーバンは、プロのマッサージ手順を研究した自動コースを搭載。その都会的なイメージとともに消費者に受け入れられ、単一モデルで28万台以上、シリーズ累計で約80万台という大ヒット商品になる。ただ、「アーバン」というカッコイイ名称の前に「モミモミ肩聖タタキロボット」という、何ともいえないサブブランドが付いていたことは、あまり知られていない。

 アーバンのコンパクト路線は、1996年の「アーバンリラックス」(心拍フィードバック付き)、2000年の「アーバンウイング」に受け継がれ、幅広い年齢層の支持を得る。同シリーズの場合、購入者のピークが「40歳代後半」にあったことが特徴だ。従来よりも若い世代に「ブームを起こした」(同社)のである。

 しかし、次第にコンパクト機であるが故の限界も明らかになってきた。

 アーバンのようなスリムデザインでは“もみ機”を大型化できず、新しい機構もなかなか取り付けられない。たとえば初代「アーバン」の施療はわずか18%。このため、アーバンシリーズは高機能/高付加価値化の流れから遅れ、販売台数もアーバンリラックスが17万6500台、アーバンウイングは4万7400台と次第に減少していく。

 一方、ラウンジチェア型の高機能モデルは新たに「リアルプロ」ブランドを与えられ、再びメインストリームに躍り出た。2001年の「モミモミ リアルプロ」(EP2110)に始まるリアルプロシリーズは、2003年の「リアルプロG」、2004年の「リアルプロG II」、2005年の「リアルプロX」「リアルプロF」とモデルチェンジを繰り返し、そのたびに新しい“手技”を習得。同社の「プロのマッサージ師に学ぶ」路線は、機構や制御技術の進歩とともに花開く。たとえば2004年に登場した「モミモミ“リアルプロG2プレミアムクラス”」では施療範囲が70%超。アーバンの時代とは隔世の感がある。

photo リアルプロシリーズ。そのスタイルは、ほとんどロボットアニメのコックピット状態。ある意味、すごい機能美だ

 そして、先日発表された新製品「リアルプロ」は、マッサージ師が使う「揉捏」(じゅうねつ)という技を実現。これにより、「按捏」(あんねつ:もみ)、「叩打」(こうだ:たたき)、「圧迫」(あっぱく:指圧)、「把握」(はあく:つかみ)、「軽擦」(けいさつ:さすり)というマッサージの基本動作6種類が揃った。その区切りを意識してか、新製品ではブランド名からアルファベットを廃し、シンプルな「リアルプロ」に戻した。


 ナショナルのマッサージチェアは、2005年の「リアルプロX」の時に累計出荷台数は300万台を突破。現在では欧州やアジアなどにも輸出され、今日も世界中の人々を癒し続けている。

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