インタビュー
» 2006年12月14日 11時20分 UPDATE

インタビュー:デジタルでも変わらぬ、ラジオのDNA (1/3)

対応端末が販売開始され、デジタルラジオが身近な存在となってきた。12月1日より本格放送を開始するなど、最も積極的な姿勢を見せるTOKYO FMに「デジタル時代のラジオ」について話を聞いた。

[渡邊宏,ITmedia]

 12月初旬に対応端末(KDDI W44S)の販売が開始され、ようやく一般ユーザーでもデジタル音声放送「デジタルラジオ」が視聴できる環境が用意された。

 変調方式にデジタル変調方式を採用した音声放送であるデジタルラジオについては、これまでもコラムニュースで取りあげてきたが、実際の放送を行う事業者はデジタルラジオをどのようにとらえているのか。

photo TOKYO FM デジタルラジオ事業推進室 室次長 藤勝之氏

 他局に先駆けて12月1日より本格放送を開始するなど、最もデジタルラジオに積極的な姿勢を見せるTOKYO FMに話を聞いた。

――本格的な放送が開始され10日ほどが経過し、対応端末も販売開始されました。リスナーからの反応を含めた、現状はいかがでしょう。

藤氏: 今日(12月11日)生放送した「Choppaya!」(月火水の昼に701チャンネルで放送している音楽番組)に、初めてリスナーからメールが来ました。嬉しかったですねえ(笑)。

 メールは携帯からのメールだったのですが、当面は3つの時間帯、「朝の通勤」「お昼休み」「夜11時から深夜1時」という3つの携帯電話の利用頻度が高まる時間帯に携帯で楽しめる番組を用意するというのが計画でしたので、まずは計画通りかなと思っています。

 デジタルラジオという動画放送も可能な新しい取り組みなので、いままでの番組作りのルールが通用しない側面があったのも確かです。開始からちょうど10日が経ち、対応端末の販売開始(12月8日)と初めての週末も乗り切り、まずはひと息つけたというのが正直なところです。生みの苦しみを超えた、という感覚でしょうか

――TBSラジオもデジタルラジオ専門局を開局する意向を表明しましたが、地上デジタルテレビほど関係各社の足並みが揃っていないように思えます。「デジタルラジオ」自体の現状についてはどのようにとらえてらっしゃいますか?

photo デジタルラジオ対応端末として初めて市販されたKDDIのW44S

藤氏: どのようにデジタルラジオという新たな放送を推進していくか、関係者間での共通理解を取り直す必要があるのではと感じています。

 放送局やメーカーなどが中心となっているDRP(デジタルラジオ推進協会)という組織があります。デジタルラジオの試験を行う際、利用できる帯域が狭く、各社が自由に試験できるほどの広さがなかったためDRPという社団法人を作ってその組織が免許(実用化試験放送)の主体となり、各社は割り当てられた周波数の中で、各自の試験を行うという状態となりました。

 2003年10月に試験放送が開始されましたが、放送自体の認知向上、受信エリア拡大や対応受信機の開発・普及はなかなかに進まず、2004年に設置された総務省の懇談会では、DRPは推進役としての役割を十分に果たせていない、と断じられる状態に陥っていました。

 そこでは、もっとアグレッシブにデジタルラジオの実用化を進めていくためには、リスクを取って意思決定が迅速にできる民間企業が上記の役割を担うべきである、と報告書が結論付けられ、都内5局が中心になってその期待に応えようと、発起人会が設立されたのが「マルチプレックスジャパン」です。懇談会の報告書の考え方にも、斬新で挑戦的な側面も盛り込まれており、放送局以外のプレーヤーも懇談会の議論の段階から多数参加していたため、順調に進めばかなり面白いことができるのではという予感がありました。

 ですが、2006年4月には総務省 情報通信審議会 電波有効利用方策委員会でアナログテレビ放送停止後の空き電波の利用方法について、従来からの予定通り検討が開始される一方で、国の監督部門による制度整備がなかなか始まらず、マルチプレックスジャパンは当初期待されたスケジュールで、事業を推進することが困難になってしまったのです。

 「もうすぐ免許が下りる」と何度も会社設立を延期する出資予定の皆さまに連絡をするのはこちらとしても本意ではありませんでしたので、9月になって、いったん会社設立準備は凍結し、懇談会国の監督部門の制度整備が進むまで待とう、と5社一致で結論を出しました。

 その報道に「白紙撤回」とか「無期延期」という見出しがついたことはご存知のとおりです。それはそれとして、僕たちは12月の本格放送開始に向けてまじめに準備も進めていました。他局はまだ方針が固まっていないのかなと感じることもありましたが、ユーザーに触れる機会さえ得られれば必ずブレイクすると信じ、今回の放送開始となったのです。

――本格放送開始のタイミングを12月と定めたのはいつごろですか?

藤氏: KDDIサイドとしては、マルチプレックスジャパンの準備状況にあわせて端末を投入するというスタンスだったかと思います。マルチプレックスジャパンは当初、7月にも開始というプランがあった時期もあったのですが、NHKの事業計画に「年内開始」という記載があったので、最終的には5月ぐらいからでしょうか、12月に本放送スタートという線で固まったのです。それで愚直に、当初の設立準備委員会での約束どおりに頑張っちゃいました(笑)。

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