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デジタルでも変わらぬ、ラジオのDNAインタビュー(2/3 ページ)

» 2006年12月14日 11時20分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――動画放送が可能な3セグメント放送を放送を行っている(3セグメントの帯域を持っている)のはTOKYO FMだけです。なぜ他局は1セグ放送で、TOKYO FMだけが3セグ放送を行っているのでしょう。

藤氏: 試験放送を開始した当初から、3セグ放送をしたい放送局と1セグで構わないという放送局が存在していていました。省令ではどちらの方式も規定されています。中波ラジオ局は、1セグで構わないというスタンスが多数を占めたのですが、私たちは「何か新しいことをするならば、動画も送れるデータ放送を駆使できる3セグでやりたい」と考えたのです。

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 3セグ放送のノウハウは同業の方には公開していますし、ユーザーからみた場合でも選択の自由があった方がいいですよね。健全な競争のためにも、他局が参入してくれるといいなと思っています。

――ラジオ局の取り組む動画放送ということで、苦労も多かったのではないでしょうか。

藤氏: デジタルラジオという出口から動画を出すのは確かに初めての経験ですが、子会社のTFMインタラクティブがブロードバンド動画配信サイト「iiV Channel」を運営していますし、公開放送の動画配信も経験があります。「動画を流す」「テレビじゃない動画」に関するノウハウは蓄積されているんです。

 テレビの世界にいる方から見れば、おかしな映像の撮り方をしていると思われるかも知れません。ですが、それは半ば確信犯なんですよ(笑)。「ラジオ的な動画」へのチャレンジを楽しんでやっています。

ラジオのDNA

――デジタルとなることで、既存放送とは何かしらの「違い」も生まれてくると思いますが、その「違い」をどのように活用していくのでしょう。

藤氏: 「違い」はないと思っています。新しいツールを得て、バージョンアップしたという認識です。電話リクエストもそうですが、新しいツールが出現すれば、それを取り込んでコミュニケーションの強さを高めていくのがラジオのDNAです。

 ハガキに始まり、電話やFax、メール、携帯メールと手段こそ進化しましが、リスナーひとりひとりの想いを受け止められるのがラジオのよさです。多様化するツールに対応するためには、こちらの表現力も進化させなければなりませんから、Webサイトやストリーミング放送も用意しました。デジタルラジオもそうした表現力強化のひとつです。ただ、あくまでもラジオですから、必ず「音声放送として完結する」のが基本です。

新しい船、新しい海

――同じデジタルの放送である地上デジタルテレビには「2011年以降、これまでのテレビでは放送が見られない」という事情があり、これが消費者へ移行を促すきっかけのひとつになっています。

 ですが、現在のところ、ラジオはアナログの既存放送とデジタルラジオが併存する方向性が示されています。デジタルラジオを聞いてもらうための動機付けをどのように行っていこうと考えていますか。

藤氏: 正直な話、ラジオって昔のように聞かれなくなってしまっているじゃないですか(苦笑)。ラジオは完全な個人聴取率なので、世帯視聴率が基本のテレビの数字と直接比較できませんが、ラジオ聴取率は数%という世界です。その既存放送のリスナー「だけ」にアピールしていくつもりはありません。

 いまラジオを聞いていないヒトに向けたアピールを行っていきたいと考えています。スイッチを入れると無料で音声が流れ出す、ラジオというメディアがあるんだよ、と。ですから、既存放送と「併存してしまう」とか「バッティングする」とかはまったく考えていません。

 新しいツールで接触できるのは、新しいリスナーだと認識しています。そうした意味では、“新しい船”(メディア)で、“新しい海”(リスナー)へこぎ出していくという感覚ですね。

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