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» 2006年12月20日 16時00分 公開

3万6000キロ上空の衛星を見守る横浜の秘密基地

横浜市緑区の丘陵に、パラボラアンテナが大量に設置された“秘密基地っぽい”施設がある。JSATの「横浜衛星管制センター」だ。赤道上空3万6000メートルの衛星をコントロールする同施設を見学してきた。

[渡邊宏,ITmedia]
photo 横浜市緑区にあるジェイサットの横浜衛星管制センター。

 衛星通信事業者のジェイサット(JSAT)は12月20日、横浜市の同社横浜衛星管制センター(YSCC)の施設見学会を開催、赤道上空3万6000メートルの衛星をコントロールする同施設の概要について説明した。

 同社は1985年に設立された、現在は9つの通信衛星を保有するアジア最大の衛星通信事業者。そのカバーエリアは日本はもちろん、インドやパキスタン、オセアニア、ハワイ、北米にまで及ぶ。その衛星はスカパー!のようななじみ深い放送サービスをはじめ、店舗向け情報配信や災害時の利用にも耐える常時接続型双方向通信、遠隔医療ネットワークなどに利用されている。

衛星名 主な利用サービス/概要
JCSAT-110 スカパー!110(2007年2月から「e2 by スカパー!」に改称)
JCAST-1B 国内/国際サービス全般
JCSAT-2A 国際サービスなど
JCSAT-3A スカパー!、衛星イントラネットなど
JCSAT-4A スカパー!、衛星イントラネットなど
JCSAT-5A NTTグループの通信サービス全般
N-STARb NTTグループの通信サービス全般
Horizon-1 北米地域用
JCSAT-R 予備衛星

 YSCCは1987年に竣工、1989年に運用を開始。9つすべての衛星を24時間態勢で管制しており、ネットワーク運用を行うYSCCテレポートセンターも併設されている。群馬県にはYSCCのバックアップ施設「群馬県衛星管制所」(GSCS)も用意されている。

 なお、YSCCは名前の通り衛星の管制をメインで行う場所であり、送信されるコンテンツ(スカパー!の映像コンテンツなど)は、契約する各事業者が独自の施設から衛星に向けて送信している(YSCC自身が委託を受けてコンテンツの送信をおなうこともある)。

 衛星はすべて静止衛星軌道上に位置しているため、メインの管制業務は衛星から常時送られてくるデータを元にした状態把握。ただ、軌道の安定している静止軌道上とはいえ、太陽や月の引力や太陽輻射圧などからの影響は避けられないため、定期的な軌道修正も重要な業務の一端となっている。

 JCSAT-1Bを例にすると、高度±15キロメートル、緯度/経度±70キロメートルまでが位置変動範囲内とされており、この範囲内から外れないよう、地上から制御が行われている。衛星自身の姿勢も安定した通信を行うために重要な要素だが、自身の姿勢制御については衛星に内蔵されているジャイロで自動的に行われている。

photophoto YSCCの管制室。24時間356日ノンストップで衛星の管制が行われている。Windowsのクライアント/サーバシステムで運用されているが、衛星の寿命(10〜15年)よりもPCの寿命が短いのが悩みだという

 センターの敷地内には無数のアンテナが設置されており、このアンテナで衛星を常時モニタリングしている。衛星とアンテナは基本的には1対1の関係になるが、敷地内には予備用や打ち上げ時の集中管理用などを含めると20以上のアンテナが存在するという。サイズはそれぞれまちまちだが、衛星の常時モニタリング(定常運用アンテナ)で直径5.5〜7メートル、最大のアンテナは直径11メートルにも及ぶ。

photophoto 3万6000キロ上空の衛星と地上をつなぐアンテナ

 同社は10月にスカイパーフェクト・コミュニケーションズとの経営統合を発表しており、その際には競争力アップのため、110度CSはもちろん、2008年夏には124/128度放送のHD化(約10チャンネル)を開始する計画を明らかにしている。そうした積極的なプランを進められるのも、ビジネスの基盤となる衛星運用が大過なく行われているからだ。

 2007年には北米地域をカバーする2つめの衛星(トータルでは10個目)、Horizon-2の運用も開始される予定となっており、この「横浜の秘密基地」が占める役割はますます増大することになる。

photophotophoto この管制センターで管理している衛星の模型も展示。左から「HS-393」、「HS-601」、「A2100AX」。太陽電池パネルが長く展開される「HS-601」は全高26メートルと9階建てのビルにも迫る大きさだ

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