インタビュー
» 2006年12月26日 16時24分 UPDATE

ソニー「TA-DA3200ES」がアナログアンプに立ち返った理由 (1/4)

ここ数年、「S-Master PRO」搭載のAVアンプを毎年発表してきたソニー。しかし今年は、アナログアンプを搭載する「TA-DA3200ES」を10万円を切る価格帯に投入した。その背景と設計思想を開発者たちに聞いた。

[本田雅一,ITmedia]

 このところ独自のデジタルアンプ技術「S-Master PRO」を搭載したAVアンプを毎年発表してきたソニーだが、今年は10万円を切る価格帯にアナログアンプを搭載した「TA-DA3200ES」を投入してきた。

photo 11月下旬に発売された7.1ch AVアンプ「TA-DA3200ES」。アナログ方式パワーアンプの「高域が細く濁りがち」「中域のフォーカス感が不足しがち」「低域が遅れがち」といった欠点を徹底的に改善した“広帯域アナログパワーアンプ”を搭載する。価格は9万9750円

 10万円以下のAVセンターの多くは、コスト的な制約のためにアンプとしての基礎体力が不足する場合が多い。10万円以下の価格帯では、本質的な音の善し悪しよりも、デジタル音場処理など機能面での充実の方が、実際の販売にも直結しやすいという事情もある。

 このため、コストはデジタル信号処理部に厚めに振り分けざるを得ず、電源や回路に使う部材、それにシャシーを中心とした振動対策などの面で上位機種ほど贅沢な音質改善対策を施せない。それでも5万円を超えてくると、程よく良い音に聞けるようにバランスさせる作り込みを行うため、ノウハウやターゲットとするユーザー層の違いなどが各社の色となって強く製品の音に現れる。

 ところがAVアンプ市場が成熟するに従い、10万円を切る程度の価格でも電源などの設計を見直し、根本的な部分でのS/N感やパワー感を引きだそうという試みに各社が取り組みだした。「TA-DA3200ES」も、そうしたアンプ部分の質を重視した低価格機(10万円近い金額を低価格機と分類するかどうかは疑問もあるだろうが、ここではあえて低価格機としたい)の1つといえる。しかしお世辞ではなく、実売8万円ほどのこのアンプは、なかなか腰の据わった力強い音を出す。解像度指向ではないが、柔らかさと力強さを併せ持つ音だ。

 その製品としての生まれもユニーク、久々の新回路によるアナログアンプということで、関係者に取材をしてみた。

アナログアンプの原点に立ち返って設計した

 DA3200ESの音は、特定の帯域のピーク感もなく、中高域から上の帯域で柔らかさも感じさせる耳当たりの良さがある。しかし低域は実に力強く、膨張感はないのにしっかりと量は出る。この価格帯の製品としては珍しい低域の出し方だ。

photo アンプの設計を担当した塩原秀明氏

 通常、このクラスで低域のパワー感を求めた場合、多少ゆるくなっても低域の量を引き出したり、あるいはある帯域から下の音をスッパリと切ってしまう(こうすると切った帯域の上の周波数帯がメリハリよく聞こえる効果があり、超低域が出ていないにもかかわらず、パンチのある低域が元気な音と感じる)などの調整が行われることが多い。しかし「TA-DA3200ES」は、もっと本格的に低域の力、躍動感を引きだそうとしている。

 このアンプの設計を行ったのは、オーディオ事業本部ホームオーディオ事業部のエレクトリカルマネジャーを務める塩原秀明氏。塩原氏はピュアオーディオアンプの設計出身で、入社以来約20年、従来回路の流用をしないオリジナルのアンプ回路設計に取り組んできた。

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