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Blu-rayとHD DVD、規格争いの現状(1/3 ページ)

» 2006年12月29日 20時17分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 今年もあとわずかとなり、来年はまたラスベガスで開催される「International CES」で業界の動きが始まる。

 予想以上の長きにわたって続いてきた次世代光ディスクに関わる規格争いも、市場に製品が揃ってきたことで、いよいよ本格化してきている。来年のCESでも、次世代光ディスクを取り巻く発表がいくつか出てくるだろう。

 ここではCESを控えての現状ということで、Blu-ray DiscとHD DVDにまつわるいくつかの話題をピックアップしてお伝えしたい。

エンジンのかかりが悪い国内のコンテンツ供給事情

 HD映像のパッケージ製品としては、HD DVDがその端緒を切ったわけだが、北米で順調にタイトル数を伸ばしているにもかかわらず、なかなか国内でのタイトル数が伸びてこない。これにはいくつかの事情がある。

 まず洋画に関しては、日本での頒布権をディストリビューターが買い上げているケースが多く、映画スタジオ直系のビデオ販売会社が日本でHD DVDやBD(Blu-ray Disc)を売ろうと思っても売れない場合がある。北米ではHD DVDが発売されているのに、日本ではBDで発売される(あるいはその逆)といったパターンがあるのはそのためだ。

 北米においては、HD DVDもBDも、垂直に一気に市場を立ち上げないとうまくいかないというコンセンサスが映画スタジオ側と家電メーカー側にあるため、契約を結んで大規模にプロモーションと製品のリリースを行っていけても、日本ではなかなか思い通りにいかない。

 また頒布権に問題がない場合でも、米国本社と日本の販売会社では温度差があったり、あるいは日本の販売会社がアジアや欧州のヘッドクォーター傘下に組織されているため、売りたくても予算が割り当てられていないといった、大きな組織にありがちな不自由さも、日本でのHD DVD、BDタイトルの発売を邪魔しているケースがある。

photophoto 20世紀フォックスの国内初期BDタイトル(左)とHD DVDの初期タイトル

 もちろん、事情は系列の映画会社によって異なっており、当然ながらソニー系のSPE(Sony Pictures Entertainment)などは北米で発売されているタイトルを積極的に日本でも販売。すでに20本近いタイトル数になってきた。20世紀フォックスやディズニーもまた、徐々にやる気を見せている。来年春ぐらいまでには、かなりのタイトル数が出てくるだろう。

 HD DVDは北米でユニバーサルが魅力的な人気タイトルを積極的にHD DVD化しており、これをそのまま日本に持ってくることができれば、相当に魅力的なラインアップになるのだが、こちらはやや難航しているようだ。

 一方、邦画に関しては東芝が積極的に働きかけを行っていることもあり、HD DVDでいくつかが販売されているものの、販売数が伸びず苦戦が続いているとの話が、光ディスク製品の中間流通業者からも聞こえてくる。

photo Blu-ray陣営の期待を背負うプレイステーション3

 こうした立ち上げ期には、熱狂的なマニアの多いアニメコンテンツも重要だ。当初、HD DVD立ち上げ時にはバンダイビジュアルがコンテンツを提供していくことになっていたが、リージョンコードないことが障害となって頓挫している。これは北米と日本のリージョンが同一のBDでも同じ。

 アニメの場合、日米価格差が大きく(場合によっては2倍以上の価格差がある)、リージョンコードが北米と同じだと、現状はまだビジネスができないというのが本音のようだ。

 関係者によると、ソニー「プレイステーション3」の発売後、郊外型量販店でBDソフトがよく動いたという話も聞いたが、継続的な動きではなかろう。日本では映画好きやアニメ好きは有料チャンネルからのエアチェックで映像を楽しんでいるケースが多く、コンテンツベンダーのエンジンのかかりが悪いこともあって、市場動向を読める状況になるにはもう少し時間がかかりそうだ。

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