ITmedia NEWS >

CESで分かった2007年のデジタルトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/4 ページ)

» 2007年01月26日 15時35分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――もう1つ、ニュー・コンバージェンスを表すキーワード「マキシマム・コンテンツ・エクスペリエンス」についても教えてください

麻倉氏: 画面からの“感動”を語る際には、「大型化」と「画質」という2つの面からの考察が必要になります。

 なかでも臨場感を得たいと思うときに大画面は重要な要素となりますので、シャープの108インチ AQUOSはとても印象的ですね。同社やSamsung Electronics、LG Electronicsなどが競っていた日韓大画面競争では、この製品をもって日本メーカーのリードが明確となったといえます。

photo 世界最大となるシャープの108インチ AQUOS

 なぜ、韓国メーカーがこれ以上画面サイズを大きくしないのか? マザーガラスの大型化競争に追従しなく(できなく)なってきたことと、100インチ超の製品が商品として成立するかを疑問視する声があがったことの2つが理由として挙げられます。結果として、Samsung、LGは売れ筋モデルの高画質化を進める方向に変換する方向にシフトし始めています。

 この108インチAQUOSは合計4台が製作されました。3台は展示用、1台は発表会場用兼バックアップ用としてアメリカに運び込まれましたが、会期中まったくトラブルは起こりませんでした。展示会の1カ月前、12月4日に完成したとは思えない完成度で、液晶で勢いを強めるシャープらしいエピソードといえるでしょう。

 この108インチAQUOSを見ていると、ソースがHDでも物足りないという印象で、4K2K(フルHDの4倍の解像度となる4096×2160)の世界が近づいていることを感じさせます。会場ではフルHD解像度は当たり前という感じでしたので、近いうちに、液晶/プラズマを問わず4K2Kの流れが現れるはずです。

 画面解像度が向上すると、見合ったコンテンツが欲しくなりますし、壁自体がテレビになるというようなアプローチも欲しいところです。社会に対しての窓というか、BGV的なコンテンツなどがこれらのデバイスを通じて出てくるような気がしています。

 ポストフルHD時代を迎えると、色の革新も進むはずです。ソニーがリアプロにサイドバンドのない光がとれ、再現範囲のコントロールもしやすくなるレーザー光源を採用してきたのはその端的な例でしょう。xvYCCの環境整備も進むでしょうね。

photo レーザー光源を採用したソニーのリアプロ(試作品)。デバイスそのものはSXRDを採用し、画面サイズは55インチ

――「大画面」と並ぶもうひとつの要素「画質」ですが、今回のInternational CESでは画質面のアピールを積極的に行うメーカーが目立ちましたね。

麻倉氏: そうですね。今回の展示では画質に対する取り組みがより表に出るようになったと思います。HD化がほぼ完了しつつあり、消費者の選択基準に「画質」が含まれるようになってきたからです。

 北米市場でソニーは40インチ以上のクラスで3割以上のシェアを獲得していますが、それは高画質モデルを優先的にアピールし、それが支持されたのが要因です。いままでは大画面テレビといえば画面サイズと価格ばかりが注目されてきましたが、これからは画質が大きなポイントになるでしょう。

 液晶については、ほぼ全社が動きの激しい場面でのボケを低減できる120Hzの倍速駆動を採用してきましたし、そこに独自の技術を投入するメーカーもあります。実際、画質について多くの改善が見受けられましたし、それを消費者にアピールできる段階にやってきました。

 コントラストについては、パイオニアのプラズマがNo1だと思います。製品は2006年のCEATECで展示されたものと同様で、コントラスト比は2万:1なのですが、2万:1という数値は一部の計測器の限界を超える値ということから、記者会見では「uncountable」(計り知れない)という表現を使っていましたが、この「計り知れない」というのは何かの象徴ではないかと思います。それはこういうことです。

photophoto 右がパイオニア新型プラズマの映像。暗部も階調が落ちずに全体的に引き締まった映像になっている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.