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美しい肌の色にこだわりました――「FinePix S5 Pro」開発者インタビュー永山昌克インタビュー連載(1/3 ページ)

» 2007年02月01日 13時46分 公開
[永山昌克,ITmedia]

 2000年発売の「FinePix S1 Pro」以来、2年に1度モデルチェンジを行ってきたFinePix Proシリーズの新製品として「FinePix S5 Pro」が登場した。独自の撮像素子スーパーCCDハニカム「SR Pro」と新しい「リアルフォトエンジンPro」を搭載し、豊かなダイナミックレンジや低ノイズの高感度画質、色彩表現の自由度などをアピールするカメラだ。

photo 「FinePix S5 Pro」。レンズマウントはニコンFマウントを採用し、外装は防塵防滴仕様のマグネシウム合金製だ

 フィルムメーカーのデジタル一眼レフ機としてどんな製品に仕上がっているのか。FinePix S5 Proの商品企画を担当した富士フイルム 電子映像事業部 商品部 担当課長 牧岡克弥氏に話を聞いた。


カメラよりも絵の価値を認めてもらいたい

――開発の狙いは?

牧岡氏: FinePix S5 Proは、第一にプロフェッショナルのフォトグラファーに使っていただけるカメラ、特に営業写真やコマーシャルの分野で使いやすい機能や性能、画質を目指しました。加えてアドバンスドアマチュアと呼ばれる人たちのニーズも想定しています。アドバンスドアマチュアにとっては、プロが使っているものと同じカメラであることが重要だと考えます。

photo 富士フイルム 電子映像事業部 商品部 担当課長 牧岡克弥氏。同社の開発部門を経て、現在は商品企画を担当している

――営業写真の分野ではこれまでのFinePix Proシリーズが広く普及しているようですが、それ以外のジャンルでは今のところ他社製品に比べ普及率が低いですね。

牧岡氏: 前作の「FinePix S3 Pro」は営業写真の分野でかなりの高いシェアでお使いいただいています。私たちが長い間お付き合いさせていただいている分野ですので、これからも大切にしていきたいと思います。一方コマーシャルの分野では、当社製品がメインカメラになっているケースはまだあまり多いとはいえませんが、今回のFinePix S5 Proで今後のさらなら普及を狙っています。アマチュアユースに関しても、これまで以上に強く意識しています。

――公式なアナウンスはされていませんが、ボディのベースはニコン「D200」ですね。ニコンからボディを購入して使用したということですか。

牧岡氏: 当社は1995年にニコンさんと共同開発したデジタル一眼レフ機「DS-505」を発売しましたが、その頃からニコンさんとは良好な関係が続いています。今回の場合もD200があったから、単にそのボディを購入したというのではなく、開発初期の段階から様々なお話をさせていただいていました。

 具体的には、ボディ自体やAE、AF、ファインダーなどのメカ部分は、ニコンさんが開発したものを使用しています。このへんはニコンさんのほうが断然得意な分野ですので、我々が口を出しても仕方ないと思います。しかし、カメラの心臓部にあたる撮像素子やエンジンなどは当社の得意分野ですので、ニコンさんとは関係なく、まったく独自に開発しています。

photo 「外側はD200ですが、ニコンさんの部分も含めてD200のそのままではなく、まったく違うカメラに仕上がっています」(牧岡氏)

――ボディのすべてを自社開発する検討はなかったのですか?

牧岡氏: 年間に数機種ものボディを発売している他のメーカーと、2年に1度しか発売していない当社とでは、技術革新の度合いが違います。現段階ではニコンさんから購入したほうがいいという判断です。私たちの考え方のひとつに、カメラを売るのではなく、カメラというのは最終的に撮られた「絵」を手にしたいために買うものであり、その絵に価値を認めてもらいたいという思いがあります。その意味で、私たちの思い入れを込められるのは撮像素子やエンジンであり、ボディ部分は基本性能がしっかりしていればいいと思っています。

――他社のように交換レンズで利益を上げることができないのは、ビジネスとして厳しくないですか?

牧岡氏: 厳しさは重々承知しておりますが、私たちとしては写真というものを世の中に広く伸ばしていかなければならない、という考え方があります。写真や出力、絵といった部分に注力すれば、当社にはプリントに関する技術もありますし、付随する様々なビジネスは広がっていくと思います。

――D200に比較して実売価格が高めですね。

牧岡氏: 今のところ市場の評価としては、高いという声と安いという声の両方の意見があります。それは、カメラとして見ているか、出力を得る道具として見ているかということだと思います。

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