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» 2007年03月12日 19時42分 UPDATE

2011年7月、地デジを見られない人たちはどうなる

地上デジタル放送への完全移行は「順調」。総務省の担当者はそうコメントするが、2011年7月の完全移行時でも視聴できない地域が残る可能性はあり、既存の機器しかない世帯ではまったくテレビが見られなくなる。そうした地域、人々へのフォローはどうなるのか

[渡邊宏,ITmedia]
photo 地上デジタル放送の普及状況

 テレビの地上デジタル放送への移行は「うまく離陸できている」――。

 2011年に迫ったテレビの完全デジタル移行について、総務省 情報通信政策局 地上放送課長の安藤英作氏は3月12日にJEITA(電子情報技術産業協会)が主催したセミナーの席で、順調に推移しているとの見解を示した。

 テレビの地上デジタル放送への完全移行は、現在のところ2011年7月24日と設定されている。安藤氏の報告によれば、2006年12月1日現在で地上デジタル放送が直接受信できる世帯の数は全都道府県の約3950万世帯まで拡大されており、これは日本全国の世帯数(約5110万世帯)の80%以上にのぼる。

 ケーブルテレビを経由して視聴可能な世帯も約1520万世帯にまで増加しているほか、アナログ周波数変更も全国648の地域ですでに実行されており(この変更によって約468万世帯が地上デジタル放送の視聴が可能となった)、2011年には5000万世帯を上回る世帯が地上デジタル放送を受信できるようになるという。

 受信エリアの拡大については、「アナログ放送エリアの100%カバー」を放送事業者自身の努力で達成させることが基本方針として確認されている。ただ、事業者自らの敷設や作業に任せるだけでは、アナログ停波の際に地上デジタル放送が見られなくなる世帯数が全体の1%にのぼる可能性があることから、行政側も中継局整備や事業者への金融/税制支援を行うことで、可能なかぎり100%に近づけていきたい考えだ。

 しかしながら、中継基地局/CATVのデジタル化などでも完全にカバーエリアを100%にできる保証はなく、弱電界/混信地域へどのようにアプローチするかという問題は残る。安藤氏は「BS/CS波を利用すべき」という放送事業者からの意見を紹介しつつ、「地上デジタル放送が見られない可能性のある1%のエリアをどれだけゼロに近づけられるかは依然として大きな課題」とコメントした。

 視聴に関するもうひとつの問題、受信側(視聴者)への対応については、どうしても視聴者へ経済的な負担を強いてしまうのため、安藤氏からは理解と協力を求める発言が目立った。

photo 対応テレビの購入など、視聴環境の整備は基本的は受信者負担

 「デジタル放送への完全移行で、最も負担がかかるのは視聴者であることは理解している。また、理解を求めるのが難しいことも分かっている」(安藤氏)

 総務省のスタンスはアナログ放送の際と変わらず、受信に必要な機器は原則的に受信者が負担することとなっている。ただ、デジタルテレビへの移行に際しては、これまでのテレビ(アナログチューナー内蔵テレビ)は使えなくなってしまい、別途、デジタル対応のチューナーを何らかの形で用意する必要がある。

 マンションなどでは受信施設の改修が必要となるケースもあるが、こうした改修も基本的には利用者(入居者)の負担となる。地上デジタル放送の導入を望んでいないひとにもなかば強制的に負担を強いることとなり、費用の国庫負担を求める声も上がっている。

 「デジタル化することで放送サービスは高度なものになり、デジタル放送は電子情報サービスのインフラにもなる。空いた周波数帯を活用することで、一般視聴者にもメリットが生まれる。こうしたことを説明し、理解してもらいたいと考えている」(安藤氏)

 諸外国ではデジタル化に際してなんらかの救済措置を取るケースも多い。アメリカでは低所得者層に向けて、チューナー購入費用として1世帯あたり最大80ドルまでをクーポンとして配布するほか、フランスも何らかのかたちで低所得者層へのフォローを行うことを明らかにしている。

 安藤氏も「原則としてデジタル放送の視聴は受信者負担」という原則は変わることはないと前置きしながらも、「ただし、負担に著しい不公平があれば、是正することは必要だ」となんらかの措置を検討する考えがあることを明言した。

 「アメリカやフランスのように低所得者層への補助を行う方法もあるし、イギリスのように、高齢者や身障者を対象に機器や設置サービスを提供するという方法もある。そういったことも検討する必要があるだろう」

photo 相談体制も拡張

 また、2011年7月に向けて、広報/サポート活動も変化させていく。これまでは「地上デジタル放送」の存在を告知する内容が多かったが、今度は「どうすれば地デジが見られるのか」の告知を中心に、行政/メーカー/放送局など関係者の連携による取り組みを強化していく予定だ。

 第一歩としてはまず、相談窓口を拡大。市町村の行政相談窓口やメーカー、放送局などさまざまなところに対応窓口を設け、視聴エリアや視聴方法といった基本的な問い合わせに対応できる体制を整える。同時に、専門的な相談にも対応できるよう窓口を組織化していく。

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