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ハイビジョンビデオカメラ、今年の傾向麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/5 ページ)

» 2007年04月03日 08時43分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 本格的な行楽シーズンを前に、ビデオカメラが活況を呈し始めている。メディアの種類もDVテープからDVD、SDメモリーカード、HDDと幅広いが、今シーズンでは各社から対応製品が登場したこともあり「ハイビジョン」を掲げる製品が目立つ。

 デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏に、AV業界の最新情報や、独自の分析、インプレッションなどを聞き出す月イチ連載「麻倉怜士の『デジタル閻魔帳』」。今回はハイビジョンビデオカメラ(以下 HDビデオカメラ)の今年の傾向について語ってもらった。

photo (撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

――まずはビデオカメラ市場全体の現在の状況を教えてください

麻倉氏: さきほど量販店のビデオカメラ売り場の店員に聞いたところ、日によっては売れるビデオカメラのうち、実に6割がHDビデオカメラだそうです。ユーザーがHDビデオカメラを選択する理由はいくつかあると思いますが、近い将来、HDビデオカメラが当たり前になるでしょうね。

 日常のスナップにはハイビジョンじゃなくてもよいという考え方もありますが、市場構造から見ると、ビデオカメラは“イベントカメラ”でもあります。イベントを後々まで残すということを考えると、ハイビジョン化は当然のことだと思います。

 家庭用ビデオカメラは1970年代に誕生して以来、さまざまに変化しましたが、一貫して「イベントを撮りたい」「撮るなら高画質で」という2つのニーズが市場を引っぱってきました。わたくしの記録としても、子供の記録としても、良いカメラ・良いメディアで撮りたいと思っていたのですね。最高の情報量を残すため、HDビデオカメラを選択するのはユーザーにとっては当然とも言える消費行動ですね。

 まだまだ店舗にはスタンダードディフィニション(SD)ビデオカメラのコーナーも設けられていますが、最近ではSDとHDの差が大きくなっているように感じます。画素数の多い薄型テレビは原理的にHDビデオカメラとの相性がいいですし、SDビデオカメラは高画素化の進んだテレビに映し出す際にどうしてもアプコンを入れざるを得ません。SDのテレビで映し出すならば問題はないですが、ハイビジョンテレビではやはりその分、甘くなってしまう。トータルで考えればHDビデオカメラが市場で存在感を増しているのは理に適っているといえます。

photo 「HDビデオカメラが市場で存在感を増しているのは理に適っている」と麻倉氏。確かに店頭でもHDビデオカメラはその存在感を増している(撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

――ビデオカメラがイコールDVテープカメラとは言えなくなってきたことも、HDビデオカメラ隆盛の一因とも言えるように思えますが、いかがでしょう

麻倉氏: メディアの多様化は確かに無視できません。以前はフォーマットとメディアが対の関係でしたが、現在は必ずしもそうではありません。つまり、フォーマットの多様化とメディアの多様化が同時に起こっているのです。最近の傾向として強く感じられるのが、ノンリニアメディアの伸びです。日本ビクターがSDメモリーカード、日立製作所がDVDをメディアに選んだあたりがノンリニアメディア化の始まりですが、AV市場全体のHD化とAVCHDの登場がそれを加速させています。

 AVCHDは2つの大きな意味を持ちます。ひとつはSDの時代から始まったノンリニア化の推進、もうひとつは導入することでさまざまなメディアでHD記録が可能となることです。フォーマットとメディアの関係について、新しい考え方を示したものと言えるでしょう。

 開発元である松下電器産業とソニーがAVCHDを積極的に推進していますが、両社の現在の製品ラインアップを見ると、松下電器産業が「AVCHD+HDD」、ソニーが「AVCHD+メモリースティック」の組み合わせを商品化していません。これは将来を読む上で、ひとつのカギとなるでしょう。

 市場で大きな伸びを見せている薄型テレビも32V型からフルHD化しています。ディスプレイが変わりつつあり、放送メディアやパッケージメディアもHD化を進めている以上、ビデオカメラのHD化も当然の流れと言えますね。テレビに映し出すモノがすべてHD化するのは今後のトレンドです。

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