現在myloとFONは、お互い連携し合って販売戦略を始めている。ソニースタイルではmyloとFONのセットを販売しているし、FONのルータにはmyloの広告が入っている。ただ現状のケータイがここまでの回線速度を実現した以上、無線LANアクセスポイントを使ってわざわざ音声通話をするメリットが、なかなか見えてこない。
もう一歩考えを進めてみれば、SNSが趨勢となった理由と同じように、誰にでも繋がるというよりも、むしろ特定の相手にしか繋がらないといった囲い込みに、メリットが見いだせるかもしれない。あるいは多人数で同時に会話あるいはチャットできることにも、メリットがあるかもしれない。
現在myloは「コミュニケーター」であるという。だがコミュニケーションを行なうには、まず電源を入れて、無線LANと接続状態にしなければならない。ケータイのように、四六時中電源を入れっぱなしでほっとけばつながるというものでもないのである。フル充電で、待ち受け時間は約10時間だ。
動画と音楽再生は、今のところ手放せない機能だ。なぜならば、持ち歩いていてもオフラインの状態のほうが圧倒的に多いからである。オフラインのときに何もすることがないのでは、わざわざ持ち歩く意味がない。
個人的には、オフラインで文章が読み書きできるメーラーの実装は必要だと思う。オンラインになればチャットも可能だが、現状のアクセスポイント数でありながら出先でわざわざオンラインでつないだと言うことは、何か用があったからつなぐわけだ。こっちとしては取り込み中なのである。そこでチャットのリクエストが来ても、鬱陶しいだけになってしまう。チャットというのは一見気楽に見えて、実は通話と同じく相手の時間をかなり束縛するコミュニケーションなのだ。
モバイルにおける非ケータイネットワークの在り方は、圧倒的な無線LANのカバーエリアに依存する。インフラ代が無料で、ケータイと同じ事ができる、というのはひとつの解だろう。あるいはオンラインである時に、取り込み中とか通話可能とかのステータスがわかることも、新しいメリットだ。「それってケータイでいんじゃね?」と言われない何かが、非ケータイネットワークには必要なのである。
サンフランシスコでは、Googleが市内に無料のアクセスポイントを設置して、広域接続サービスを提供する計画があった。しかし実際にはどうも、EarthLinkがこの地位を勝ち取ったようだ。サービスはまだ始まってはいないが、実行されればその答えの一端が明らかになるだろう。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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