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W-SIMを活用した玄人志向の超小型HTTPサーバ「つないでイーサ」プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(3/3 ページ)

» 2007年05月23日 08時00分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 さて、「つないでイーサ」の「隠れた本来の姿」と「今の有様」を十分理解した上で、実際に販売されている商品を見てみよう。パッケージ外観はとても「玄人仕様」とは思えないファンシーなイメージと、それを確信させる「つないでイーサ」という深読みしないと何のことか分からない関西ノリの商品ニックネームが大きく記載されている

 パッケージの中には、OSX-1本体、専用ACアダプタ、専用LANクロスケーブル、取扱説明書の3点が入っている。肝心のWILLCOM SIM Module(W-SIM)は当然含まれておらず、ユーザーが独自で入手することが必要だ。

 悲しいかな、筆者を含むOSX-1の活用イメージの貧弱なユーザーが最初に考えることは、まず、パッケージ裏書きにもある「W-SIMを利用したEthernetダイアルアップアダプタ」としての活用に行き着いてしまう。しかし、将来的なパソコン以外の接続もこの理解の上に成り立つことは事実である。

 OSX-1の導入手順は筆者のような素人にも難しいところはまったくなく、取扱説明書通りに行えば、ウィルコムの提供しているPHSインターネット接続サービスである「PRIN」にいとも簡単に接続できてしまう。パソコン以外の機器を使用してのネット接続を大前提としているOSX-1では、インターネットへのダイアルアップ操作もパソコン側からの操作ではなく、OSX-1側に備えられているプッシュボタンを押すだけで実現してくれる。

photophotophoto 設定画面のメニュー構成。一般的なルータなどと同様の機能を設定可能だ(左)、ダイアルアップ情報はOSX-1内に設定する この機能で、電源投入後は、OSX-1前面プッシュボタンを押すだけで自動的にPRINに接続してくれる(中)、IPアドレスは考える必要なく取扱説明書通りに設定するだけで終了する(右)

 あえて言うなら、必要なのはW-SIMをOSX-1に挿入せずに行う機器設定モード(機器の構成やダイアルアップ情報の設定まで)とW-SIMを挿入してからのLANモード(実際のアクセス)との違いを頭で理解することだけだろう。とは言え、ダイアルアップルータとしての使用だけなら、機器設定はたったの1回限りなのでそれも必要ではないだろう

photophotophoto 簡単な設定が終了したらケータイからW-SIMを抜き取る(左)、ケータイから抜き取ったW-SIMをOSX-1の上部から挿入する(中)、専用クロスケーブルでOSX-1をパソコンのイーサポートに接続(右)
photophoto OSX-1の前面下のプッシュボタンを長押しして電源投入する(左)、LAN接続でインターネット環境を実現 グリーンに点灯しているLEDは、上から電波強度、(緑は電波強)、回線接状況(緑は接続中)、Powerランプ(緑は動作中)(右)

 自己メンテナンスや自己診断機能を搭載し、フラッシュメモリを搭載した超小型HTTPサーバである「つないでイーサ」は、まだまだ非公開な部分も多く、多くの謎を秘めている。今後、これらが徐々に公開あるいは発見されて新しい機能がベールを脱いでいくだろうし、状況によっては新しい機能の提供や開発が進むだろう。新しい製品を好んですぐに飛びつく「献身的人柱先進ユーザー」を裏切らないシステムであることを期待したい。

 繰り返しになるが、「つないでイーサ」は、出荷時に明快な製品仕様のエンドポイントが見えたシステムではない。また単なる「W-SIMを利用したイーサネットダイアルアップアダプタ」を求めているユーザーに最適なシステムでもない。

 今は出荷時には隠された機能の登場を待ちながら、その公開や発見に一喜一憂出来る大人の趣味を楽しめるユーザーに向けた製品だ。決して今、公開され実現している機能だけに注目し、電卓片手に投資対効果を分析し、眉間にシワを寄せて評価する製品ではない。

 「つないでイーサ」、久しぶりに登場した楽しいITガジェットだ。そしてただのガジェットを「ガジェットキング」に押し上げるのは、公私を問わず、また間接、直接を問わず、開発メーカーからの情報公開と、何事も面白がれる余裕あるユーザーの積極的参画だろう。

商品:「つないでイーサ」 OSX-1

販売元:ウルトラエックス

開発元:サイレントシステム

価格:オープンプライス(実売価格1万4800円前後)

竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

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