――次はメーカーごとに現行大画面テレビの特徴・トレンドを教えてください。まずは液晶メーカーからということで、46V型で世界最小幅(同社)26.6ミリという細枠テレビ「LCD-H46MZ70」を投入してきた三菱電機です。
麻倉氏: 2007年の上半期にもっとも「登場感」があったのは三菱電機ですね。ここ数年、三菱電機の薄型テレビは存在感が希薄で、「家庭画質」の提案ぐらいしか見るべきところがなかったのですが、新製品は大きく変わりました。なにしろほとんど無からの登場ですからね(関連記事)。
まず特徴として挙げられてるのは細枠を前面に打ち出したスタイリングです。液晶テレビはその大部分が液晶パネルで占められているので、フレームを細くすることで、デザイン面に大きな変化がもたらされます。太いフレームでマッシブな感じを打ち出すのではなく、細枠でパネルを強調して「大事なのは画面なんですよ」と他社とまったく異なるメッセージを打ち出しています。
画質もかなり向上しています。ホワイトバランスの悪さやノイズ感が少なく、気持ちよい視聴体験をもたらしてくれます。細かく言えば解像感や視野角の問題など改善して欲しい部分も残っていますが、前モデル比では大幅な向上を果たしていますね。
1980年代後半は三菱電機のテレビが市場を席巻していました。1985年に当時としては超大型と言える37型の製品を投入するなど、その存在感は際だっていました。SD解像度でも解像感があれば大画面の製品として成立するという考え方を示したメーカーでもありますし、「大画面」という言葉を作り出し、定着させたのは実はかつての同社なのです。
このように以前から「大画面で見ると感動する」という提案をしてきたメーカーだけに――ここ数年のマイナスとも言える状況からの再登場とはいえ――新製品の放つインパクトは大きいです。赤マル急上昇のメーカーと言えるでしょう。
――次は新ブランド「REGZA」を2006年2月に投入し、順調にブラッシュアップを続ける東芝です。搭載する画像エンジン「メタブレイン・プロ」は多くの人が称賛していますね。
麻倉氏: 「王者の貫禄」といった雰囲気を感じさせますね。新製品のミドルクラス「H3000」シリーズはハイエンドとして位置づけられている「Z2000」よりも画質面での向上が見られます。ある新聞のテストで1位に輝きました(関連記事)。
HシリーズはHDDを搭載するのも特徴のひとつですが、その存在を感じさせないのが快適です。HDDをレコーダー的に搭載するのではなく、タイムシフト視聴を行うための機能として組み込んでいるその思想は未来的とすらいえますね。
画質面ではメタブレイン・プロに起因する絵作りのうまさが光ります。東芝は自社でパネルを製造していないので、他社から供給を受けているのですが、他社製パネルを使いながらよくぞここまで仕上げたものだと感心します。他社が製造したパネルを利用すると追い込んだ絵作りを行うのは難しいという定説がありますが、絵作りという「技術」だけでここまでできるメーカーはそう多くありません。
実は画像エンジンを作れる液晶テレビメーカーはそう多くないのです。メタブレイン・プロの良さを1つ挙げるならば「階調」であり、パネルが能力として持つ白と黒の間の階調表現能力を十二分に引き出すことができます。「階調のREGZA」といってもいいぐらいです。
確かに黒レベルについてだけ言えばまだ映画向きとまで言えませんが、階調表現に関して言えば、メタブレイン・プロによる緻密な階調は映画も上手に映し出します。階調とはテクスチャ=質感の再現ですが、その表現が上手なのがREGZAです。春に各社から登場した製品の中では、No.1の出来といえますね。
――次はトップブランド「AQUOS」を擁するシャープです。万人受けする製品を作るというイメージがありますが、フラグシップの「Rシリーズ」の投入をどうご覧になりますか。
麻倉氏: これまでは「AQUOS」というブランドイメージと製品の画質に乖離がある感が否めませんでしたが、春から投入されたフラグシップの「Rシリーズ」はそうしたイメージをかなり覆しています(関連記事)。
シャープは基本的に大量生産の企業であって、ある程度の数量を製造しないと新たな要素を製品へ実装できないという構造的な問題を抱えていますが、亀山第2工場の生産も安定してきており、さまざまな部分へ高画質化に結びつく要素を組み込めるようになってきたのです。
同社の映像は基本的に階調指向ではなくコントラスト指向で、明るい場所では十分な視聴体験を提供してくれますが、暗所コントラストが弱く、暗い部分の表現力には乏しいのです。ですが、Rシリーズは明るさセンサーと画質モードをうまく使いこなすと、かなりしっとりした表現が出来るようになりました。1か0でではない映像を表現できるようになったのは大きな進歩です。
ボディデザインは変わらず喜多俊之氏によって行われていますが、基本の色調をこれまでの光沢あるシルバーからマットブラックに変更したことで、高級感を演出しています。高級志向のRシリーズは退職祝いとして購入する人も多いようなので、そうした需要にもうまくマッチしていますね。
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