ITmedia NEWS >

ここまで来た、日本のハイビジョン放送の現状小寺信良(2/3 ページ)

» 2007年06月25日 19時35分 公開
[小寺信良,ITmedia]

放送網のHD化における課題

 外部のポストプロダクションから編集後に持ち込まれるプライムタイムの番組、いわゆる局納品のフォーマットは、ほとんどがHDCAMになった。またMPEG-4を採用した新フォーマット「HDCAM-SR」も民放全局に入り、次期納品フォーマットとしての期待も高まる。日本テレビの場合は、番組およびCMの受け皿としてのVTRデッキは、基本的にはHDCAM-SRとなっている。SRのデッキは、HDCAMの再生も可能だからだ。

 また今後増えていくと予想されるサラウンド番組の納品に関しては、今後はHDCAM-SRが促進されると見られている。なぜならば、HDCAMは音声トラックが4つしかないのに対し、SRは48kHz/24bit非圧縮のオーディオが、12トラックあるからだ。全チャンネルを個別に非圧縮で収録できるだけでなく、ダウンミックスのステレオトラックも1本のテープに収録できるため、送出時のリスクが軽減されるというメリットがある。

 都心部だけの事情を考えれば、すでに現状はほぼハイビジョン化の対応は問題なく進んでいると言えるだろう。しかし放送というのは、電波のネットワークでもある。地方局のハイビジョン化に加えて電波送信設備の新設、さらにキー局と地方局を結ぶ映像回線のハイビジョン化という、多層的な設備投資が必要である。

 キー局と地方局のネットワークは、一般的に考えればキー局が送出する番組を地方局が受けるということで成立するように見えるかもしれない。だが実際には、報道などの用途で地方局取材のものをキー局に上げる、いわゆる上り回線もハイビジョン化する必要がある。

 現在キー局と地方局を結ぶ映像伝送には、大きく分けて2つの方法がある。1つがNTTの圧縮HD回線を使う方法、もう1つは通信衛星を使う方法、SNG (Satellite News Gathering) だ。

熨斗氏: SNG回線については、技術サイドで2004年秋からネット局さんと頻繁に会議を持ち、日本テレビ系列まとめてHD化するのが一番効率がいい、という判断のもとに約1年がかりでプランを練りました。極力コストを抑えるためには、系列全局で送信・受信の設備を共同購入することがベストという姿勢で、各局さんに協力していただきました。受信設備としては、各局で受信用の4〜5メートルのパラボラアンテナがあるんですが、そういう設備も半年がかりで全30局を順次更新し、予定どおり去年の10月末には、日本テレビからの配信はすべてHDで無事スタートできました。

 また、各局のSNG中継車ですが、これは系列全体で60台程度あります。こちらもコスト抑制のため共同でまったく同じ仕様の車両を購入することにし、去年の春から1年以上かけて順次更新をしています。ちょうど今月で共同購入分は終わりますけど、既に8割以上の車両がHD化されていて、SNG伝送数の9割はHDになっています。

――NTT回線のほうはいかがでしょう。

熨斗氏: こちらは今現在、系列で半分ぐらいのネット局さんが回線網に入っています。回線網の設備をするということは、ネット局さんにはかなりの負担増になってしまうので、我々からいつやって欲しいというのは非常に言いにくい話なんです。できる限り早くしてください、ということになっています。2005年春に報道方針として、2008年8月頃までには可能な限りHD化しましょう、ということを系列全体に示したので、それを目指して努力する、という姿勢です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.