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東芝の“勝負機”「RD-A600」を検証する(前編)(2/3 ページ)

» 2007年07月18日 11時43分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 HD DVDドライブは、ライトワンスのHD DVD-RとHD DVD-R DLをサポートしている。容量はHD DVD-Rが15Gバイト、HD DVD-R DLが30Gバイトとなっており、価格面から利用頻度が高いであろうHD DVD-Rの録画時間は、カタログスペックでは地上デジタル放送の場合で約1時間55分、BSデジタル放送では約1時間21分だ。2層のHD DVD-R DLメディアも利用できるとはいえ、いずれも2時間に満たない点は気になる。

 そこで本機では、デジタル放送に付随するデータ放送分の信号をカットして録画することで、HDDの消費量削減と同時にHD DVDメディアへの保存時間を拡大している。データ放送は番組に関連する情報も含んでいるが、ほとんどがニュースのダイジェストや天気予報、他の番組案内などだ。つまりリアルタイム視聴時でないとあまり意味がないし、データ放送の信号をカットしても番組の画質には影響はない。同社では、これによって地上デジタル放送なら約2時間15分をHD DVD-Rメディアに保存可能としている。

 では、実際にどれだけHD DVD-Rに保存できるか確認してみよう。地上デジタル放送、BSデジタル放送でハイビジョン収録された番組を録画し、チャプター分割機能を利用して1分刻みのチャプターを作る。これをHD DVD-Rにダビングし、どの位保存できるのかをチェックした。なお、録画番組は地上デジタル放送が「大相撲中継」、BSデジタル放送は海中の記録映像番組だ。どちらもハイビジョン収録されたかなり画質の良い番組であり、少なくともビットレートが低い方の番組にはあたらない。

 検証の結果、地上デジタル放送では2時間13分、BSデジタル放送では1時間39分の保存が可能だった。カタログスペックに対して地上デジタル放送では26%増し、BSデジタル放送で22%増しということになる。あくまで一例だが、地上デジタル放送では2時間を余裕をもって超えており、地上デジタル放送では多い2時間枠のドラマや2時間強の映画もほぼCMカット作業などなしに保存できる計算になる。

 また1時間枠の連ドラなども、CMなど不要部分をカットすれば3話分を収めることができる可能性がある。本機の場合、放送録画時に本編とCMの間に自動でチャプターを作成する「マジックチャプター」や自動プレイリスト作成機能があるため、本編のみのプレイリストを作成してダビングするのは難しくない。

photophoto 左が地上デジタル放送、右がBSデジタル放送でほぼHD DVD-R一杯に高速ダビング可能な状態。これよりも1分増えると高速ダビング、つまりTSのままダビングできなくなった
photophotophoto 左はドラマをマジックチャプター/本編を有効にして録画した場合で、綺麗に本編とCMがチャプターで分離されていることがわかる。先頭から本編なので、中央の画面のように「奇数チャプタープレイリスト作成」を実行するだけで本編のみのプレイリストが作成される。右は作成されたプレイリスト。比較的本編が長く46分を超えていたため、HD DVD-Rに3話は入りそうにはないのが残念だ

 またHD DVDメディアに対しての高速ダビングの自由度が高いのも特徴的だ。これは本機というよりはHD DVDのフォーマットのメリットだが、デジタル放送をTS録画した番組はもちろん、デジタル放送のVR録画、地上アナログ放送や外部入力のVR録画といったSDクオリティの録画番組もHD DVDメディアに対して高速ダビングが可能だ。ここで重要なのは、VR録画された番組はDVDへの高速ダビングも可能という点。この一見当たり前に思える機能は、現時点で競合するBlu-rayレコーダーでは実現されていない。

 理由はBD-R/BD-REへのビデオ記録ではフォーマットがMPEG2-TSに統一されているため。パナソニック製品ではVR録画された番組はDVDへは高速ダビングだが、BD-R/BD-REへは等速ダビングになり、ソニー製品では逆にBD-R/BD-REへは高速ダビングが可能だが、DVDへは等速ダビングという制限がある。ソニー製品はVR録画もMPEG2-TSで行っており、BD-R/BD-REへのダビングを重視した訳だ。VR録画は言い方を変えればMPEG2-PSであり、理屈からいえばデータ構造を組み換えるだけで画質劣化なしにMPEG2-TSに変更できるはず。しかし、どちらの製品も現状は再エンコードを伴う。

 この高速ダビングの自由度をどう見るかは難しいところだ。HDコンテンツとSDコンテンツを次世代DVDメディアに混在して保存できる点は競合製品でも同じ。現時点で次世代DVDレコーダーを購入する人がほかにDVDレコーダーを持たない例は少ないだろうし、ハイビジョン録画と次世代DVDへの保存に割切ってしまえば本機のメリットは正直薄くなる。ただし、Blu-rayレコーダーが持つジレンマを本機が持たないという点は覚えておいたほうがいい。筆者も便利だと思うし、本機のほうがDVDメディアからの次世代DVDへの流れという点でも自然だと感じる。

photophoto 左はHD DVD-Rに実際にTSとVRを混在させた例。いずれも高速ダビングで劣化なしにムーブ/コピーできた。ちなみにTSとVRはダビング作業自体は同時には行えず、作業を分けて追記していく形になる(右)。ここはちょっと不自然に思った部分だ

 HD DVDメディアへの書き込み速度は高速ダビング時で等速だが、地上デジタル放送を基準にすると約2倍速ということになる。HD DVDの等速は約35Mbpsなので、約17Mbpsで放送されている地上デジタル放送の約2倍、つまり再生時間の約半分でダビングが可能だ。ちなみにパナソニックの「DIGA」でも同じ表記基準が取られており、4倍速ダビングとしているがドライブとしての書き込み速度は2倍だ(それでも本機の倍速いが)。

 本機の場合、高速ダビングでHD DVD-R全体に書き込む時間を約1時間としているが、実際には54分程で完了した。参考までに地上デジタル放送ならTS録画した30分の番組が10分40秒、BSデジタル放送なら15分50秒でムーブできた。ファイナライズに要した時間は40秒だった。

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