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次世代DVDソフトの飛躍に必要な「何か」インタビュー(1/2 ページ)

» 2007年08月29日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo 「次世代DVD」の口火を切ったソニーのBlu-ray Discレコーダー「BDZ-S77」(現在は生産終了)

 ソニーが2003年にBlu-ray Disc(BD)レコーダー「BDZ-S77」を発表することで始まった「次世代DVD」。その後にはライバル規格となるHD DVDに対応する機器も登場し、現在では低価格な再生機も用意されているほか、コンテンツについてもDVDと同時にBD/HD DVDが用意されるケースも増えており、次世代DVDを取り巻く環境は徐々に充実してきた。しかし、いまだにブレイクするまでには至っていないというのが一般的な見解だろう。

 なぜ次世代DVDが普及しないかという問題については、小寺氏も「5つの理由」を挙げて考察しているが、映像ソフトをリリースする映画会社側としてはどのような見解で次世代DVDをとらえているのだろう。

 BDとHD DVD、双方の次世代DVDソフトをリリースしながらも、先ごろ、HD DVDの排他支持を表明したパラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンの中瀬桂子氏(マーケティング デパートメント ディレクター)に話を聞いた。

――2006年11月に次世代DVDソフトのリリースを開始してから半年以上が経過しましたが、市場からの反応はどのようなものなのでしょう?

photo パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 中瀬桂子氏(マーケティング デパートメント ディレクター)

中瀬氏: DVDもリリースを開始してから本格的に市場が形成されるまで5年近くかかっていますので、次世代DVDについての反応は想像の範囲内だと認識しています。メディアチェンジというものは、とても時間のかかるものですし、VHSからDVDへの移行に際しては画質や利便性に大きな向上があったにもかかわらず、それだけの時間が必要でした。わたしたちを含むメーカーにしても、ユーザーにしてもまだまだ移行するまでには時間がかかるでしょう。

――これまでに「U2 魂の叫び」「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」「M:i:III」「ブラックレイン」「ドリーム・ガールズ」など10タイトルをリリースしていますが、最も市場からの反応が良好だったタイトルはなんでしょう。また、「次世代」という表現を使うとDVDからいずれは移行するモノという印象を抱いてしまいますが、はたしてそうなのでしょうか。

中瀬氏: 最も反応がよかったのはなんといっても「M:i:III」ですね。やはり作品自体の知名度が直結する印象です。ですが、9月にリリースする「ザ・シューター/極大射程」(ザ・シューター/極大射程 スペシャル・コレクターズ・エディション)の予約状況を見ると、あるE-Commerce企業では初動の予約数は、次世代DVD版がDVDに迫る勢いになっており、変化が現れているように思います。

 次世代への移行ですが、5年ぐらい経過すればDVDと並ぶかなという印象を持っています。M:i:IIIのDVDレンタル版をリリースする際に前作と前々作の品揃えを調べたのですが、まだまだ数量としてはVHSが圧倒的に多く、レンタルの主流がDVDに切り替わったのは2004年ごろだったことが分かりました。先ほどは次世代への移行に必要な時間を5年と申し上げましたが、ひょっとするともっと時間が必要なのかも知れません。

――VHSからDVDへのメディアチェンジには、大幅な画質向上や利便性の向上がありました。DVDと次世代DVDへのチェンジに際しては確かに画質・音質ともに向上しますが、視聴環境に依存する側面があることは否めません。「次世代ならでは」はアピールしにくいのではないでしょうか。

中瀬氏: 確かにそうかも知れません。ただ、画質・音質画質以外の分かりやすい「次世代ならではのメリット」(インタラクティブ性など)を盛り込むには、企画を含めた制作側にまだまだ時間やノウハウが足りないのが現状です。

 「ブラック・レイン」の映像特典は国内で製作しましたが、製作現場でもいまだに画質・音質はDVDレベルが標準なので、ハイビジョン撮影をするだけでも相当の苦労がありました。パラマウントとしてはまず画質・音質を高めることに注力していく方針です。

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