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倍速駆動(?)なアップスケーラー「HDオプティマイザー」(2/2 ページ)

» 2007年09月12日 14時49分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 出力映像は720p固定のようで、ボタンでオフにしても画面サイズは変わらない。画質は、少なくともディスプレイ内蔵のズーム機能で拡大表示した場合にくらべて発色やコントラストは良好だ。ただ、エッジ処理などの機能を検証しようと左ボタンを押してもあまり違いはわからない。森林など細かい背景やテロップのエッジなど、確かに解像度が上がったように見受けられる部分はあるものの、それは違いを発見しようと画面を凝視して初めて気づくレベル。パッと見でわかるものではなかった。

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 一方、はっきりと効果を感じたのはアニメ映画を見たときだ。たとえばスタジオジブリの「天空の城ラピュタ」では、冒頭のタイガーモス号がアップでゆっくりと画面を横切るシーンや飛行船を上空から俯瞰するシーンなどでは、2-3プルダウンによるガタつきが消え、明らかにスムーズになった。

 また同じジブリ作品の「千と千尋の神隠し」は、油屋の登場シーンをはじめ、千尋がお花畑を駆け抜けるシーンなど、とにかくパンやティルトが多い。液晶ディスプレイで見ていると、そうしたシーンのたびにブラウン管では生じないガタつきに気付いてしまい、物語に没入していても“素”に戻ってしまうのが難点だが、HDオプティマイザーを使うとその頻度が大幅に減る。これは明らかなメリットだ。

 ディスプレイ側の入力情報では1280×720/60Hzと決してフレームレートが倍になっているわけではない(そもそもディスプレイが対応していない)から、入力信号と同じ60フレームの中でスムーズに見えるように補正していた。つまり、液晶テレビの倍速駆動というよりは、日立製作所のプラズマ「Wooo」に搭載された「なめらかシネマ」に似た動きをしていると推測できる。

 AHSによると、HDオプティマイザーはHDMIでディスプレイ側の情報を取得して、入力可能な最大限の周波数で送り出すという。ハイフレームレートに対応したディスプレイなら75Hzや120Hzに変換され、スムージング処理とフレームレート変更の結果を統合して出力する仕組み。だから“オプティマイザー”(最適化)なのだ。

 ただし、同機のように映像を解析して新しいフレームを作り出す技術は、入力される信号(映像)が決まっていないだけに難しい面が多く、弊害も起こりがちだ。今回の場合もそれは散見された。

 たとえば前述の「天空の城ラピュタ」では、タイガーモス号がアップになるシーンで左右にあるプロペラの回転がはっきりと“見えてしまった”。本来、高速回転するプロペラを人の目が捉えることはできない。だからアニメでは動きが連続しないコマを並べて“速そう”に表現するが、HDオプティマイザーのDSPはご丁寧に「連続しない動き」を解析して見事に繋げた。結果として、プロペラがはっきり、しかもゆっくりと回っている状態に見える。飛び続けているのが不自然に感じるくらいだ。


 「HDオプティマイザー」が持つ多くの機能のうち、少なくともアップスケールとスムージングに関しては効果を感じることができた。価格は4万円台半ばと一般的なアップスキャンコンバーターと比べて少々高いし、上記のような弊害も起こるが、とにかく面白い付加価値を持っているのは事実だ。この部分にどの程度のお金をかけられるか、その許容範囲が購入のカギになるだろう。

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