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» 2007年09月28日 20時32分 UPDATE

本田雅一のTV Style:プラズマと液晶(4)――液晶選びは視野角に注目

数多く店頭に並ぶ液晶テレビ。さて、どれが良いかと見比べる前に、ぜひとも知っておきたい“基礎の基礎”がある。それは液晶パネル方式の違いだ。

[本田雅一,ITmedia]

 数多く店頭に並ぶ液晶テレビ。さて、どれが良いかと見比べる前に、ぜひとも知っておきたい“基礎の基礎”がある。それは液晶パネル方式の違いだ。テレビの画質というのは、最終的に自分の気に入った画質を設置場所で得られれば大成功。そうした意味からすれば、液晶パネルの種類など“どっちでもいい”話だ。しかし、実のところ液晶パネル方式は、ユーザーの試聴スタイルと密接に関連しており、“向き”“不向き”がある。

コントラストと視野角のトレードオフ

 皆さんが検討している液晶テレビは、どの様な場所で、どのように視聴しようと考えているのだろうか?

 もし一人暮らしで、テレビの真正面から見る場合がほとんどならば、好みによってどの製品を選んでもかまわない。しかし、テレビと自分の位置関係が一定ではなかったり、3人以上がおもいおもいの位置からテレビを見るといったファミリー層は、トータルの画質以前に視野角の問題について、正しい知識を持って製品選びに挑むことを勧めたい。

 “いやいや、カタログを見ると、どれも170度以上の視野角と書かれていますよ”という声も聞こえてきそうだが、そもそもスペック上に表記する視野角は「コントラストが1:10以上で見える範囲」と決められており、テレビ視聴を行う上ではあまり意味のない数値だ。実用上の視野角はもっと狭い。

 では、どの程度狭いのだろうか?

 液晶テレビに使われている液晶パネルのほとんどは、IPS、あるいはVAという種類に分類される。話題に上ることが多いシャープのASV液晶、サムスンのPVA(あるいはS-PVA、ソニーのSパネルも同じ)液晶などは、VA型に分類される。一方、LGフィリップスのIPS(あるいはS-IPS)や日立・東芝・松下の合弁会社で生産されるαIPSは、その名の通りIPS型だ。

photophoto ソニーのBRAVIA「Xシリーズ」(左)とシャープのAQUOS「Gシリーズ」。SパネルやASV液晶はVA型に分類される

 もし、あなたがどんな角度から見ても色が変化して見えにくい、多人数での視聴に向いた液晶テレビであることを重視するならば、IPS方式を選ぶ方がいい。IPS方式は正面から45度以上の斜め方向から画面を覗き込んでも、コントラストの落ちがほとんど気にならず、また色相の変化が少ない。

 しかしコントラストはVA型に対して低く、800:1から1200:1程度のコントラスト比となる(VA型は2000:1を超える)。加えて、黒が色付きやすいため、暗部の表現全体に色が被ってしまうなどの問題も抱えやすい(実際は製品によって程度が異なる)。コントラストが高い=高画質というわけではないが、絵を描く自由度が高いとはいえ、真正面から見た時の画質を高めやすいのはVA型だ。

 ところが、高コントラストを引き出しやすいVA型は、IPS型とは逆に視野角が狭い。斜めの位置から見た場合、IPSではコントラストが下がるだけだが、VA型の場合はコントラストの落ち方がIPSよりも急峻な上、トーンカーブも大きく変化してしまうため、映像の印象が明確に変化してしまう。くわえて色相にも変化が出る。パソコン用液晶ディスプレイで、グラフィックスデザイン用途にIPS型が好まれるのは、色相やトーンカーブの変化が少ないためだ。

 液晶パネルを斜め上から覗き込んでみて、全体に白っぽくトーンカーブが崩れてくるようならば、それはVA型液晶を用いたテレビと考えていい。IPS型ならば多少、コントラストは落ちてもトーンカーブは変化しないため、映像の印象が大きく変わって感じられることはない。

 ただし、VA型の視野角による色相やトーンカーブの変化はパネルごとに異なる。これはVA型液晶に使われる位相補償フィルムの選び方によるものだ。ごくごく簡単にいえば、最大コントラストを高める方向でフィルム特性のチューニングを行うと視野角は狭くなり、視野角を広げる方向でチューニングすると最大コントラストが下がる。

 50インチを大きく超える大型のVA液晶パネルを採用するテレビが、同時期の42インチ以下に比べてコントラストが低い場合があるが、それは大型テレビの方がより視野角を広くしなければならない(左右、上下での視差が大きくなるから)からだ。

 話が脱線してしまったが、スペック上のコントラストの高さや正面から見た場合の画質ばかりを気にしていると、視野角の問題を置き去りにしがちだ。むろん、画質は重要である。しかし、まずは利用スタイルや設置場所のレイアウトをよくよく考えた上で、どの程度の視野角が自分に必要なのかを、あらかじめ考えておくことを勧めたい。

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