今回の試作機が完成するまでに、その前身として2種類の「モバイル Eye-Trek」が開発された。初代モデルは2005年に製作。常時装着というコンセプトから、大画面・高精細は求めず小型化を優先し、「瞳分割方式シースルー光学系」を採用した。しかし、HMDは外付けバッテリーとPCとに有線で接続され、装着した際の見た目はかなり“野暮ったい”ものに。ユーザーに受け入れられるためには、携帯性に富みなおかつスマートなデザインが必要と考え、開発チームはHMDのワイヤレス化を目指した。
2006年に製作された2代目はPCとの無線通信を実現したが、バッテリーはユニットに収まりきらず、有線で接続されていた。また、光学バーと無線ユニットをつなぐコードがむき出しで、まだ“試作感”が残る外観だった。
そこでさらにデザイン性を追求し、誕生したのが今回の「モバイル Eye-Trek―慧眼―」だ。これまでは市販の眼鏡に装置を取り付けていたが、同試作機は眼鏡ブランド「Monkey Flip」とコラボレーションしたオリジナルデザイン。眼鏡と、無線/バッテリーユニットとを完全に一体化しコード類も外から見えなくすることで、“製品”といえるレベルにまでデザイン性を高めている。
さらにスマートフォンとの通信もこの試作機から可能になった。将来的にはPCを持ち歩く必要がないよう、データはすべてサーバに収納し、モバイル端末がサーバから情報を受信してHMDに映像を表示する――そんなサービスを想定している。
同研究所はモバイル Eye-Trekの実用化の時期として、5年後を目安に研究を進めている。今後の課題はやはり“デザイン”だという。「昔はヘッドフォンを街中でつける行為は違和感があったが、今では普通になっている。それはユーザーに“ヘッドフォンをつけることが格好いい”と認められたから。モバイル Eye-Trekの光学バーがそんな風に認められるかは、まだわからない」と、龍田氏は話す。
デザイン性を高めるためには、内蔵ユニットをさらにコンパクトにすることが必要だが、基板のチップを統合するなどまだまだ技術的に改善の余地はあるという。また光学バーもより目立たなくなるよう、取り付け位置や長さなどを検討していく考えだ。「実際、デザインの案は今もさまざまなものが出ていて、それは然るべき時期にお見せできると思う。まだまだ進化する余地は残している」と、同研究所シニアコーディネーターの井場陽一氏は語った。
ウェアラブルセンサーを使用したインスパイア型ユビキタスとしてのサービスは、10年後の実現を目指す。「現在は体中にセンサーをつける必要があるが、これではユーザーに受け入れられない。センサーの統合を図り、ペンダントのような自然に身につけられるものに変えていく」(龍田氏)。
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