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ハイビジョン時代のムービー保存学小寺信良(3/3 ページ)

» 2007年11月05日 08時30分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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これからが本番の東芝

 東芝はご存じのようにHD DVD推進なわけだが、ここでもやはりBDとHD DVDの対立の図式が持ち越された。東芝がVARDIA「RD-A301」で採用したHD RecとAVCRECとは、互換性がない(→AVC録画対応で10万円を切る? 新VARDIAが登場)。

 現在のところ、HD Recは録画番組の保存に使われるに留まるが、10月末から11月にかけて、CEATEC 2007でも披露されていた新gigashotが発売される。720PのKシリーズ、フルHDのAシリーズ、東芝としては初のハイビジョンカメラ参入だ(→東芝、フルHD録画可能な世界最小のHDDビデオカメラ)。

photophoto 11月に登場するgigashot Aシリーズ(左)、12月に登場するレコーダー「RD-A301」(右)

 記録方式はH.264だが、AVCHDではなく、HD DVDに直接書き込めるフォーマットになるという。HD Recに対応するかどうかは、現時点ではわからない。というのも、RD-A301の発売が12月と、まだ先だからである。

 しかし感触としては、今の鼻息からすると、おそらく発売までにはサポートするようなんとか持っていくのではないかと予想している。なぜならば次世代DVDの覇権争いにおいて、ビデオカメラのサポートの有無で差別化が行なわれるとするならば、そこに製品を充てていかなければならないからだ。

 東芝のビデオカメラをご記憶の方は、もしかしたら少ないかもしれない。だが初代gigashot V10は、HDD搭載の小型SDカメラで、作りが良かった。当初は東芝直販サイトのみの発売であったにも関わらずかなり売れて、最終的には一般量販店でも販売されたのである。当時としては珍しかった、動画静止画同時撮りを実現していたこともあっただろう。

 しかし次モデルのRシリーズは、HDD容量は増えたもののサイズも大型化し、絵としても全然モノにならなかった。あれから1年以上時間をかけて練った商品なだけに、今回のシリーズには期待したいところだ。

 レコーダーの難しいところは、同一メーカー内の製品だけ繋いでいる分にはある程度制御できるが、他社製のカメラをどう扱うかということだろう。ただでさえカメラの記録フォーマットは拡散傾向にある。AVCHD内でさえ、Hi-Profile/フルHDを推すパナソニック、Hi-Profile/1440のキヤノン、Main-Profile/1440で十分とするソニーで分かれている。さらに日立はBDに直接書くし、日本ビクターはMPEG-2だ。三洋はAVCHDではなく純粋なH.264になっている。しかもH.264の総本山であるAppleのQuickTimeでもサポートしていない、フルHDだ。

 これに東芝が参入するわけだから、レコーダー以上にビデオカメラのフォーマットは、ワケがわからなくなりつつある。これは、誰がどういう具合に始末を付けるのだろうか。1人がずーっと同じフォーマットのビデオカメラを買い続けるわけでもないわけだから、いつかは全フォーマットをまとめて面倒を見るデバイスが必要になるのだ。

 それがPCなのだ、というのでは、ついて行けない人が必ず出てくる。先にも書いたように、ハイビジョンカメラユーザーとPCユーザーは、必ずしもイコールではないからである。

 ダビング10など賛否両論あるレコーダーだが、いつの日かPC並みの拡張性を持った、「リモコンで使える汎用機」となる時代がやってくるのだろうか。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は小寺氏と津田大介氏がさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社) amazonで購入)。

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