コラム
» 2007年12月17日 08時30分 UPDATE

小寺信良:ケータイメールが奪ういくつかの大切なこと (1/3)

携帯電話のメールはその特性から、「常に誰かとつながっている」というこれまでになかった状態を生み出した。確かに便利ではあるが、その便利さの代償となるものはなにか。

[小寺信良,ITmedia]

 携帯電話の社会的なあり方については、いつかまとめたいと思っていたものの、なかなかきっかけがなかった。だが先週はいろいろと動きがあったようである。

 まず12月10日の発表によれば、総務省の要請で電気通信事業者協会(TCA)4社が、未成年者に対しては有害サイトのアクセスを制限するフィルタリングサービスを原則加入にするという方針を打ち出した(→携帯サイトフィルタリング、未成年者は原則加入に)。

 これまでもフィルタリングサービスは存在していたが、これはまずそういうサービスがあるということを親が知っており、なおかつそれを利用するという意思表示が必要であった。だが今回の発表では、未成年者の新規契約の場合は、デフォルトでフィルタリングがONに設定されることになる。また既存ユーザーに関しても、周知の上でフィルタリングをONにするという。

 もう1つは12日の、「健全な携帯サイト」を認定する第三者機関を設立するという、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の発表である(→「健全なケータイサイト」認定 MCFが第三者機関設立)。これは従来のフィルタリングサービスの限界であった、「有用なサイトまで遮断してしまう」という問題を解決するものである。

 「健全なサイトを認定する」といった行為そのものについては、いろいろ反対意見も予想される。しかし以前から、ケータイやPCのネットワークサービスに対して、未成年者に対する保護対策を誰が行なうべきかが問題になっていたのは事実だ。これに対してキャリア側が対策に乗り出したことは、1つの前進だと言っていいだろう。

 しかしキャリア側が対策をすれば、それで万事解決というわけではない。ユーザー側で行なうべきは、いわゆるネットやメールといった情報伝達手段に対するモラルの教育である。だがこれも、なかなか一般の親には、難しい作業だろうと思われる。

 なぜならばその親にしても、ITの恩恵を受けるようになったのはつい最近という人が、圧倒的に多いからだ。PCにしてもケータイにしても、ビジネスで必要な人は早くから使っていただろうが、家庭内の主婦にパソコンやケータイが浸透してから、おそらくまだ10年も経っていない。インターネット接続インフラの価格破壊が起こって、人々は突然、フルスペックのテクノロジーの恩恵を受けるようになったのだ。

もはや手紙ではないメール

 ケータイの普及で、社会は大きな影響を受けた。それが顕著に表われているのがドラマのシナリオであろう。以前のドラマでは、話を急展開させるためには、まずその「急」の場面を描いておき、それを誰かが見ていて主人公に知らせる、という手法を採るしかなかった。旧来のドラマの中では、電話というのは家庭のシーンか、刑事部屋でしか鳴らないものだったのだ。

 ところが現代のドラマでは、どんなシーンでも、突然電話が鳴って話が急展開してゆく。シーンの流れを無視して割り込むことができ、さらに同時刻で起こっている2つのシーンを瞬時に接続することができる。ドラマの中の「ケータイ」とは、安易にストーリーが展開できる、非常に便利なツールなのである。

 もちろんこの状況を視聴者が理解できるということは、ケータイの特性を承知しており、現実社会と照らし合わせることができるからである。リアルタイムで人を捕まえることができるのは、ケータイのメリットであるが、その反対に、いつまでも関係が切れないというデメリットも生み出している。

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