HD DVD、ロボットを動かす：2008 International CES

[芹澤隆徳，ITmedia]

　ワーナーのBlu-ray Disc一本化のニュースで幕を開けたInternational CES。その後もXboxを巡る発言など、なにかとつらいニュースばかりが伝えられるHD DVDだが、東芝ブースではちょっと興味深いデモンストレーションが行われている。

HD DVDプレーヤーがJazzの映像を流している横で、バンダイの「Little Jammer」が演奏している。映像は「Special Content“Jazz”by Love Notes」

　HD DVDプレーヤーがJazzの映像を流している横で、バンダイの「Little Jammer」が演奏している。それだけなら別に変ではないが、よく見ると6体のバンドメンバー（ロボット）が映像に連動している。画面の女性シンガーが歌えば、ロボットの女性ヴォーカルも歌う。ドラムが目立つシーンになるとロボットのドラマーがはりきる（ように見える）。しかも、流れる音楽に合わせて照明まで変化し、雰囲気を盛り上げている。HD DVDに収録されたライブをLittle Jammerが“再現”しているのだ。

　「映像とロボットは、フレーム単位で完全に同期しています」（同社コアテクノロジーセンター、ホームブロードバンドシステム開発部第一担当の久野真司グループ長）。

　同氏によると、今回のデモはHD DVDのインタラクティブ機能「HDi」を使用して外部機器を制御するというもので、ロボットや照明の制御情報は予めHD DVD Advanced Content内のデータとして記録しているという。

　制御信号は、人形1体あたり4bitが割り当てられており、それを6体分で合計24bit。HD DVDプレーヤーからは映像信号（HDMIもしくはコンポーネントの輝度信号）と一緒に出力されるため、分岐した映像信号の一方を専用のコントローラで取り出す仕組みだ。一方の照明には5bitを割り当てていて、やはりコントローラでDMX規格の制御信号に変換する。つまり、照明やLittle Jammerは特別なものではなく、既存の製品がそのまま使用できる。

専用コントローラ（右）。HD DVDプレーヤーとはコンポーネントケーブルで接続していた

　「現行HDiにある機能なので、HD DVDプレーヤーをアップデートする必要もありません。制御信号をビデオデータから抜き出す簡単なハードウェア（とコンテンツ）さえあれば、既存のプレーヤーとLittle Jammerで楽しめます」（同氏）。

　デモ映像の画面には制御信号を示すインジケータが表示されていて、プレーヤーのリモコンで各ロボットの動きを制御できる。例えばドラムだけオフにすると、ロボットのドラマーが休息する。またリモコンのボタンを押して任意にドラムを叩かせるといったことも可能。ユーザーはセッションに参加した気分を味わえる。これらはHDiが持つ「AudioMixer」「EffectAudio」の機能で実現したという。

画面で制御信号のモニタリング中

映画を追体験するアミューズメントホームシアター

　もちろん、制御する機器は今回のLittle Jammerに限らない。同じ玩具でいえば、例えばセガトイズの「グランドピアニスト」なども相性が良さそう。グランドピアニストは鍵盤制御にMIDIデータを使用しているため、開発は容易だ。「今回のデモはバンダイさんの協力で実現しました。玩具はもちろんですが、MIDI接続が可能な楽器などもターゲットになるでしょう」（同氏）。ユーザーは、HD DVDに収録された一流アーティストのライブに“参加”できるのだ。

　玩具や楽器以外にも用途は考えられる。例えば同社のネット家電シリーズ「Feminity」やホームシアター用の調光システムと連携すると、家電を巻き込んだバーチャルリアリティなホームシアターが出来上がる。映画を見ているとき、火事のシーンになると照明を赤くしたり、エアコンから温風が吹き付けたりして気分を盛り上げる。あるいは南極のシーンでは部屋の温度を下げるなど、さまざまな応用が考えられるという。

　「インタラクティブ機能といってもポップアップやゲームばかりでは面白くないでしょう。HDiでは、さまざまなアミューズメントが考えられます」。

　では、Blu-rayでは同様の機能が実現できないのだろうか。尋ねてみたところ、「われわれはBD-Javaの仕様にアクセスできません」と前置きした上で、「機能実現性やリアルタイム性などの問題から、恐らく実現できないと考えています」と話していた。