ITmedia NEWS >

れこめんどDVD:「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2008年01月15日 12時05分 公開
[サトウツヨシ,ITmedia]
前のページへ 1|2       

ボラットの正体は意外とちゃんとしている?!

 荒唐無稽な本作ですが、制作の背景は意外とちゃんとしています。ボラットを演じるサシャ・バロン・コーエンは、英チャンネル4のコメディショー「アリ G」(03年に映画化もしている)の人気者。ラッパーのアリ G(Ali G)をはじめさまざまな変キャラに扮するのですが、そのひとつがボラット。

 今回の「ボラット」では、このカザフスタンの変なおじさんが登場するショートコントがスピンアウトしたというわけですな。NY入りしたボラットがホテルのペイテレビで見かけた「ベイウォッチ」のパメラ・アンダーソン(96年「バーブ・ワイヤー/ブロンド美女戦記」でラジー賞新人賞受賞。あのときビデオ業界はまだアツかった、懐かしいね)にひと目惚れして仕事そっちのけでLAへ向かうというロードムービーとしての縦糸を追加して、1本のエンタメ映画に仕立てた手腕はさすがです。ご長寿番組化している「Mr.ビーン」(08年1月19日公開で新作もあり)と同じような展開なんですね。やっぱり意外とちゃんとしているね、ギャフン。

 サシャ・バロン・コーエンの次回作は、「ボラット 東京へ行く」を名古屋ロケで製作というのは嘘で、ティム・バートン監督の「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(08年1月19日公開)だったりします。

 結果もきっちり出していて、「ボラット」は全米BOX OFFICEで2週連続1位(06年11月7日、14日付)、06年ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演男優賞受賞、アカデミー賞脚色賞ノミネート、ついでに「ニューズウィーク日本版」06年12月6日号では表紙を飾っていましたな。しつこいようだけど意外とちゃんとしてるぞ、チキショー。

おとそ気分に水を差すステキなDVD

 ボラットとプロデューサーのアザマットがホテルの一室で大ゲンカ。そのときお互い全裸。マウントポジションから寝技へ、そのときお互い全裸。戦いはエスカレートして場外(室外)へ、ドアを放てばそこは住宅ローン業者集会。最終的には警備の人に首根っこをパシッとつかまれる。そのとき全裸。

 こんなシーンを大型テレビ、5.1chサラウンドで体験……したい人はどうぞ。パソコンの画面でテキトーに見ても爆笑、嘲笑、苦笑い必至です。

 映像特典は「旅のおまけ」として「多言語ぺらぺら」「秘蔵ショット」「宣伝活動記録」を収録。「多言語ぺらぺら」は音声メニューですがその中のひとつが隠しコマンドとなっており、うっかり選べば1日が台無しになること請け合いです。「秘蔵ショット集」では例のロデオ大会の後日談(ニュース番組で紹介)や、行く先々での受ける職務質問の模様など、よくできたドッキリ映像が楽しめます。

 「宣伝活動記録」はマスコミの前に出ること自体がすでにネタだったりするので、これはかなり面白いです。トロント映画祭での舞台挨拶ではマイケル・ムーアがボラットを紹介。そしてボラットのひと言「あのデブに感謝します」。各国での映画祭、プレミア上映での模様の他、サタデー・ナイト・ライブに出演したときの映像もなかなかスリリング。

 と、ノリノリで見ているうちになんだか巧妙にマーケティングされた作品なんだなーと、ふと我に返ってしまいました。サシャ・バロン・コーエンさん、なかなか商売上手なヒトとみた。

 てなわけで、新春のおとそ気分に水を差す批判精神満載の本作に、笑いのセンスと巧妙なマーケティングに思いを馳せつつお楽しみください。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.