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「ダビング10」とは何だ――MIAUがシンポジウム(2/2 ページ)

» 2008年01月17日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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ダビング10は妥協の産物

photo オーディオ&ビジュアル評論家の増田和夫氏

 オーディオ&ビジュアル評論家の増田氏は「ダビング10はせめぎ合いの狭間に生まれた妥協策」と述べ、ダビング10についての技術的な問題点を指摘した。

 増田氏が大きな問題として指摘したのが、ダビング10がDTCPのオプションを利用した日本だけのローカルルールであること。1世代のみコピー可能という信号はDTCPのCCI(Copy Control Information)にて定義されているが、それは「1世代のみコピー可能かどうか」を管理するだけであり、回数のカウントは機器側で行われる。DTCPがカウント情報を伝送できず、その情報が機器側で管理されるということは、n回コピーされたという情報は機器間で共有されないことになる。

 つまり、「ダビング10」は実質的にHDD内蔵型の機器でしか運用できず、しかも、i.LINKなどで機器間コピーを行った際、ダビング10であるはずのコンテンツもコピーワンスの状態でしか扱えない。単体のデジタルチューナーやレコーダーを外付けした場合にはコピーワンスの運用となる。「ケーブルテレビ(STBを利用して)で番組を視聴している場合、ダビング10はまったく緩和されない」(増田氏)

 ダビング10運用下ではアナログでのコピーが無制限となることも問題点として指摘された。「アナログコンテンツの著作権利機能であるCGMS-Aは視聴とコピーの区別を行えず、整合性が取れていない」(増田氏)。また、レコーダーなどのGUIが複雑化すること、アップデートで対応するにしても取扱説明書の送付をどのように行うのか、なども指摘された。

 また、EPNは実質的なコピーフリーでありそうした運用は認めがたいという主張に対しては、「EPN対応のハードウェアはほぼ存在していないので、権利者の主張するようにEPNにしたらコピーがすぐ蔓延するというような状況にはならないのではないか」と疑問視する。

 「メディアとは中間媒体で、データを運ぶ乗り物。世代を超えてデータを受け渡すこと大切であり、それがメディアの本質だと考えます。ただ、著作権や商業的な点も無視できないので、EPNの運用が妥協点ではないでしょうか」(増田氏)

米国のEPNは「利用の実態」がない

photo AV機器評論家・コラムニストの小寺信良氏

 小寺氏からは米国におけるEPNの現状について報告された。「日本はコピーワンスで、米国はEPNで」とはよく言われるが、小寺氏は「EPNは米国でほとんど知られていない」と述べる。

 米国ではCATVが広く普及しており、同じ番組が何度も再放送されるほか(場合によっては同日中に再放送が行われることも珍しくない)、ビデオ・オン・デマンドや双方向CATVサービスの普及、DVDボックスの安価な販売などもあり、放送録画に対する需要そのものが高くないという。レコーダーも存在するが、日本と違ってEPGが配信されず、特定の番組を録画するためにはなんらかの情報配信サービスを利用する必要がある。こうした事情も日米の録画に対する需要差を生み出しているのではないかと小寺氏はいう。

 また、小寺氏は一度の購入で複数機器へ映像をダウンロードできるTiVoのダウンロードサービスや先ほど発表されたAppleの動画販売サービス「iTunes Digital Copy」などにも言及し、米国ではテレビ番組を自分で録画してポータブル機器にコピーするという行為はほとんど行われておらず、機器ごとにダウンロードするというように細分化され、1つのコンテンツを複数機器で利用する場合、契約ベースによる再生権の購入という仕組みが構築されつつあると報告した。


 本シンポジウムに先立って、MIAUが行った放送視聴と私的録画についてのアンケート結果も報告された。デジタルコピーの望ましい制限回数については68%が「無制限が望ましい」と回答。59%がHDDレコーダーを活用していながらも、映像のアーカイブ先としては「パソコン及び周辺機器」を37%が選択(次点はDVDへアーカイブしたいで34%)していた。

 ただ、ダビング10はどのような行為かを正確に回答したのは75%にとどまっている。アンケートはWebで行われ、回答者もMIAUの存在を認知しているいわば先進的なユーザーであるにもかかわらず、ダビング10についての正確な情報が完全に周知されていない状況であることが明らかになった。

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