3つ目のサンプルはほとんど動きのないシーンの一部分を拡大したもの。動きの少ないシーンはH.264の得意とする所とはいえ、TSEの3.6Mbpsでも十分に情報量が確保されている点は立派だ
もちろん、3つのサンプルの比較で本機のトランスコーダーの性能のすべてを評価することはできない。ただ、傾向として感じるのは、本機のトランスコーダーは積極的にノイズリダクションを行うことで圧縮率を向上させ、そのぶんエッジ情報をしっかり確保するという点。これにより、SN比が高く解像感の高い画質を実現しているといえる。ノイズリダクションが効きすぎている印象も受けるが、実際には動画としての解像感につながる情報はしっかり確保されており、見栄えのする画質を実現していると感じた。見せ方は、かなりうまいのではないだろうか。
またアップデート前の製品ではシーンチェンジ時の破綻の多さを指摘する人が多かったようだが、アップデート後の試用機を見る限り、とくにそれを感じることはなかった。もちろん、まったくないということではないが、競合となるソニーやパナソニック製品と比較して少なくとも多いわけではない。
実際の運用となると6.8MbpsのLPモードはやはり番組を選ぶという印象は受ける。解像感やSN比は十分なのだが、ハイビジョン収録された番組では若干ながら人肌などの諧調が失われた感じが気になることもあった。まぁ、「LPモード」に位置づけられているくらいだから、決して万能のビットレートではない。ただし、今時のデジタル彩色のアニメであれば(諧調が平坦な場合が多いので)それこそ3.6Mbpsでも問題ないと思う番組もあった。
評価に用いたビットレートの中では、やはり9.2Mbpsあたりがバランスが良いと感じられる。TSモードと比較してもシーンチェンジ時の破綻が増えることはほとんどなく、諧調の損失が気になることも少ない。静止画として切り出してしまうとSPモードとの差異も感じるが、動画としてみると区別をつけるのは結構難しそうだ。ライバルとなるソニー、パナソニック製品もそうだが、やはりH.264でのハイビジョン記録は8〜9Mbpsあたりが1つの“落しどころ”になるのだろう。
本機で気になったのはむしろ、TSEモードのビットレートによる色合いの変化だ。サンプル画像ではSPモード、9.2MbpsがTSモードに対して若干白っぽい色合いになっており、これがLPモードや3.6MbpsではTSモードに近い色合いに戻っている。破綻を感じるほどではないが、動画として見ていても少々気になった。アップデートで改善するのなら是非対応を望みたい部分だ。
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