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“プラズマカンパニー”からの脱却を目指す北米パナソニック2008 International CES(3/3 ページ)

» 2008年01月21日 12時20分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 ただ、今回の薄型プラズマの展示も合わせ、数年前に展開した“プラズマ=パナソニック”のイメージが強い。「家族団らんを技術で支える松下」への転換を進めるには、あまりに“プラズマカンパニー”のイメージが強すぎるのではないか? という印象を、個人的には持っている。そのあたりをどう感じ取り、パナソニックブランドを北米で構築していくかも、これからの北島氏の手腕にかかっていると言えよう。

photo パナソニックというブランドは、北米でも「安心できるブランド」として定着してきたと話す北島氏

 「われわれはすでに“プラズマカンパニー”と訴求した時期を超えて、薄型HDTVを中心に総合的なソリューション提案、製品提供を行うAVメーカーとしての訴求に切り替えています。ディスプレイの種類に関しても、プラズマ、液晶といった方式を問わず、サイズやニーズに合わせて適した製品を提供しています」と北島氏。

 北米におけるパナソニックのブランド認知は、すでに99%を超えて“認知の幅”に関しては十分に取れてきている。今後はパナソニックというブランドの下に、深くカッティングエッジを狙うサブブランドを作っていくというのが、北島氏の考えだという。

 例えば薄型テレビであれば、“パナソニックのプラズマ”ではなく、“高画質薄型テレビならVIERA”といった具合だ。同様にデジタルカメラの「LUMIX」をブランドとして確立させること、携帯型ナビシステムとしてストラーダブランドを確立させることなど、松下の北米におけるブランド戦略は新しい段階に入ってきた。

多様なユーザー層ごとに商品をカスタマイズし、世界に発信

 「パナソニックというブランドは、良い意味では安心できるブランドとして定着してきたと思います。しかし、一方で突飛な機能やデザインは生まれてこないというイメージもあるでしょう。そうした保守的なイメージから一歩抜けだし、“パナソニックって面白い”と思ってもらえる。そうした製品を提供していきます」(北島氏)。

 具体的には、流通の特徴、購買層の特徴に合わせて、同じ分野の製品でも全く異なるSKU(Stock Keeping Unit:在庫の管理単位)を用意する。米国では流通ごとに、顧客の階層が比較的きれいに分離される。人種、言葉、カルチャーが異なれば、好まれる製品も異なるのは当然だろう。

 例えば低価格のガジェットオーディオ機器に関しては「ヒスパニック系の消費者は音質よりも、アンプのパワーが大きいほど良いという価値観があります。一方で、高額所得層向けはアンプのパワーなど関係なく、デザインの完成度や音質などに対してマジメに取り組まないと売れません」と北島氏は話す。

 各製品で流通ごとに特化した製品を開発すれば、それだけでSKU数は膨大な数になるが、「アメリカ人向けの商品を作るのだから、門真(松下本社がある大阪府門真市)だけで考えても無理です。すでに北米の商品企画機能を強化する施策を行っており、アメリカがトップを走っているコンテンツやインターネットサービスと強く結びつき、各客層ごとに最適化した製品の企画を進めています」と、前へと突き進む。そして、北米発で企画した商品を、各国の事情に合わせてカスタマイズして発信していく流れを作る。

 「これまでは、高画質になる。フルHDになる。とスペックで押してくることができましたが、フルHDテレビがコモディティになってくると、今度は各地域、購買層に根ざした製品を作らなければなりません」(北島氏)。

 多様な流通、多様な人種、多様な所得層を抱える北米市場において、各購買層に合わせた商品企画を磨き、そこで生まれた商品を世界に発信する。プラズマ拡販にすべてのパワーを注ぎ込んだ数年を超え、新しい試みに挑戦する北米松下の行方にしばし注目したい。

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