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薄型テレビの音質アップグレードを考える(1)本田雅一のTV Style

» 2008年02月01日 21時29分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 以前にもこの連載で取り上げたことがあるが、初めて薄型テレビを購入したとき、気になるのが「音」だろう。音が悪いといったら言葉が悪いかもしれないが、首を傾げる人は多いはず。果たしてどんな部分が悪いのか、想像しにくい面もあるからだ。

 薄型テレビの場合、そもそも薄い上にデザインを重視すると、径の大きなスピーカーは採用できない。そのため、各社はさまざまな工夫をして、デザインと音質のバランスを取ろうしている。以前にもお伝えしたように、中には音域バランス(低音や高音など周波数帯域ごとのエネルギー感のバランス)に関しては、致命的ではない程度の仕上がりになっているものが徐々に増えてきた。

 ただ、音域バランスが取れてきたから「音が良くなった」とは言えない。本来、ステレオ放送の中に含まれている音場の立体感や奥行き感、音源ごとの質感の違いなどを描き分けられるわけではないからだ。

 そうした質感のレベルまでケアしている製品というのは、これまでにパイオニアの「KURO」以外に聴いたことがない。それに続くのがパイオニア下位モデルの「HXシリーズ」といったところ。その後ろは大きく離れて、多少の差はあるものの団子状態で固まっている。

 これは前回も少し書いたが、パイオニアがことさらに音にお金をかけているわけではない(もちろん、価格が高い分、それなりにコストはかかっているが)。実にシンプルにきちんとオーディオ的に電源や信号の引き回し、グランド電位の取り方など、“まっとうなオーディオ設計をやっているだけ”に過ぎない。

 というわけで、将来的にはどのメーカーの製品にも、テレビの画質と大きさに見合う音質を実現してほしいのだが、すでに購入した薄型テレビに対しては、別の方法でケアするほかにないだろう。

 このあたりは、メーカーも販売店もしっかりと商売に結びつけており、量販店でテレビを購入すると、それなりの音が出てくるスピーカーが組み込まれたAVラックが購入時のポイント付与で入手できるよう、きちんと計算して商品を開発している。読者の中にも、ポイントを使ってスピーカー内蔵ラックシステムを購入したという人は少なくないはずだ。

 ただ、出来ることならば、自分の利用スタイルに合った製品を選ぶためにも、もう少し予算を足して設置するための家具とオーディオシステムは別に考えて揃えることをお勧めしたい。

photophoto ラックシステムはデザイン的に大きなメリットがある。左はシャープの“AQUOAオーディオ”、右はヤマハの「YSP-LC3000」と日立「Wooo」の組み合わせ

 スピーカー内蔵ラックシステムの長所は

  • ほとんどの場合、薄型テレビよりも低域が伸びて聴きやすい
  • スピーカーが単体で露出しないため、デザインの統一性がある
  • ラックとテレビの相互接続が確認された機種の場合、ボリュームや入力切り替えなどが自動的に連携する(HDMI CECを利用)

と、思いつく範囲でも結構あるものだが、一方でラックシステムには中途半端と感じる部分もある。

  • 再生帯域はテレビよりも広いが、必ずしも“音質が良い”わけではない
  • デザインやサイズの選択肢が限られている
  • バーチャルサラウンドは一部の例外を除いて、実際の利用シーンでは使い物にならないものが多い
  • スピーカーシステムをアップグレードすると、ただの収納性が低いラックにしかならない(多くの場合、ラックとパワードスピーカー部は分離できない)

 他にもあるかもしれないが、こうした複数機能を1つにまとめた商品にありがちな、柔軟性の低さが、将来的に問題になる可能性が高い。購入する時というのは、いろいろと考えた末に「これしかない」と自分の中で結論を出しているものだが、実際に使い始めると新しいことを発見してしまうものだ。

 ということで、購入したテレビの音を利用スタイルと予算に合わせてグレードアップする道を、もう少し幅を広げて探してみよう。幅広く検討した結果、やはりスピーカー内蔵ラックシステムが良いという結論になるかもしれないが、それは皆さんの使い方次第。次週以降、利用スタイル別に薄型テレビに合うオーディオシステムを探してみることにしよう。

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