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スピーカーの“群遅延”を解消する「フルバンド・フェイズコントロール」とは?(1/5 ページ)

» 2008年02月06日 16時43分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 一部の部品調達が遅れた関係で出荷が遅れていたパイオニアのハイエンドAVアンプ「SC-LX90」が近日中に出荷される。すでに予約も200台分近く入っているそうで、間もなく予約していた消費者の手元には届くだろう(このため、出荷当初は店頭にはデモ機が並ばないかもしれない)。

 そのSC-LX90。多重帰還回路によりデジタルアンプ特有のクセを押さえ込み、出力部のローパスフィルタとスピーカーのネットワーク回路が干渉して音質に影響する問題などにも対応したICEパワーをベースに、パイオニア独自の改良を盛り込んで歪み率低減や高域レスポンスを改善したダイレクトエナジーHDアンプが話題だ。

photophoto 近日中に出荷が始まるパイオニアのハイエンドAVアンプ「SC-LX90」。価格は88万円

 もちろん、一体型AVアンプだけに、さまざまな回路が1つの筐体に収められ、ノイズ干渉などさまざまな問題を抱えているハズ。ところが、これを強靱なシャシーと電源などの物量と入念な構造設計により抑え込んでいるのだろうか。ICEパワーを採用するほかのオーディオアンプ以上に強烈な印象を聴く者に与えてくれる。

 デジタルアンプらしい、タメなくいきなり立ち上がる低域のレスポンスに加え、滑らかで温度感のある中高域から高域にかけての繊細な表現力まで持つ。DSPをバイパスする「Pure Audio」モードを選択すると、まさか一体型でここまで! と思うほど鮮度の高い音が出てくる。

 と、手放しで褒められるデキなのだが、今回の記事では別のところに着目し、パイオニアの開発者にインタビューを行った。SC-LX90に加え、VSA-LX70VSA-AX4AH、VSA-AX2AHにも搭載されている、「フルバンド・フェイズコントロール」という技術に、大きな感銘を受けつつも、どうやったらそんなスゴイことが出来てしまうのか、大きな興味を持ったからだ。

photo インタビューに応じてくれたのは、パイオニア、スピーカー技術部設計2課に在籍する細井慎太郎氏(左)とAVコンポ設計部第2課の服部章氏(右)だ

 結論から言うと、これは技術的にも、そしてその処理の結果を体感しても面白い。まさかそんな発想で作られているとは、まさに“コロンブスの卵”とはこのことだ。

話題のフルバンド・フェイズコントロールとは

 さて、今回のテーマであるフルバンド・フェイズコントロールとはどんな技術なのか。先に機能の概要を説明しよう。

 フルバンドとは「全帯域」、フェイズとは「位相」。特にここでは、スピーカーユニットの位相のことを指し、全帯域でスピーカーの位相管理を行おうという技術だ。

 皆さんが使っているスピーカーには、チャンネルあたりのスピーカーユニットが1個(あるいは複数でも同じサイズが複数個ならんでいるものもある)しかないフルレンジスピーカーと、サイズの異なる複数のスピーカーユニットを並べたマルチウェイスピーカーがある。

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