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» 2008年02月29日 18時47分 UPDATE

本田雅一のTV Style:家庭における3D映像の可能性を考える(1)〜映画とAVの密接な関係〜

近年、多くのハリウッド映画会社が3D映画に注目している。「市販のビデオパッケージが劇場に近い画質を実現し始めたら、次の差別化は3D化しかない」というわけだ。では、増えてきた3D映画を家庭のAVシステムで楽しめる時代はくるのだろうか?

[本田雅一,ITmedia]

 先日、アカデミー賞の授賞式が米ロサンゼルスのコダックシアターで開催された。ご存じのようにこの賞は、実際に映画製作に関わる仕事をしている人たちの中から選ばれた選考委員の投票で決められる、映画業界自身による優れた映画人、作品、技術を表彰するもの。その授賞式のアフターパーティが、毎年、各所で盛大に開催される。

 ほんの少しだけ、今年はそのパーティに出席したのだが、ちょっと理解できないほどの内輪での盛り上がりに、日本人の筆者は少しついていけなかった。とはいえ、その熱気と勢いを感じると、なるほど1つの方向に動き始めると信じられないようなことも実現してしまうものだと妙に納得してしまう。

 例えば3D映画。テーマパークのアトラクションでは以前からポピュラーな存在である3D映画だが「市販のビデオパッケージが劇場に近い画質を実現し始めたら、次の差別化は3D化しかない」と、これは1社だけではなく、ほとんどのハリウッド映画会社が口を揃えて話していた。

 3Dは効果としては面白いけれど、だからといって主流にはならないと思っていた筆者は、みんながあまりに真剣に3D映画を語るので半信半疑に「本当かねぇ」と思ったのが2年ほど前のこと。

 しかし、今や米国では3Dシステムを導入しているシアターは明らかに増加傾向だそうで、最近ではU2のボーノが目の前で手振りをし、語りかけながら歌う「U2 3D」が人気。通常の映画も「ベオウルフ/呪われし勇者」や「ジャーニー3D」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の3Dバージョンなどコンテンツも増えてきた。

photophoto 身近な映画館への3Dシステム導入も進んでいる。写真はドルビーの「Dolby 3D Digital Cinema」システムで上映中のスクリーン(左)と専用メガネ(右)

 ジェームズ・キャメロン監督がニュージーランドで撮影中の最新作「Avatar」(アバター)も3D制作だし、ディズニーは今年中にもアニメ作品の半分を3D制作とし、来年以降はほとんどのアニメ新作を3Dで作るという。当然、そのノウハウはディズニーの実写作品にも導入されていくだろう。

 撮影技術も3Dシステムの方も、まだまだ発展途上にある3D映画の技術だが、それでもハリウッドは今後、作品の3D化をガンガン進めていくようだ。技術の黎明期からキッチリと対応していかないと、本格的に流行し始めてからではノウハウの面で乗り遅れることは必至だからだ。

 ということは、そう遠くない将来、家庭でも3D映像を見せようという動きが強まってくると考えられる。なぜなら、ハリウッドで導入された映画の技術は、何らかの形で家庭向けのAVシステムに取り込まれてきているからだ。理由は簡単で「元の映像や音声があるなら、改変せずにそのまま家庭向けの付加価値として利用すればいい」という考え方が根本にあるからだ。どうせ投資をするならば、家庭向け映像ソフトからも回収したいというのが映画会社の本音だろう。

 こうした流れは、家庭向けビデオから映画会社が多くの収入を得ていたわけではない昔からあった。例えばサラウンドサウンドを実現したドルビーステレオ技術は、「Dolby Pro Logic」として家庭にサラウンドサウンドをもたらした。劇場映画の音声がドルビーデジタルでデジタル化すると、これもLD(そしてDVD)で家庭にもたらされている。DTSに関しても同じだ。

 劇場用映画を5.1チャンネルで音作りするなら、それをそのまま家庭に持ち込むだけで、新しい付加価値になる。むしろ家庭向けに音をリミックスする方がコスト高になるくらいだ。

 3D映画の場合も、せっかく左右の目用に映像を製作しているなら(通常、左目用映像が2D用映像として使われるようだ)、それを両方入れることで3D映画ソフトを作ることができる。3D映画が増えつつある今、家庭向けパッケージも3D化の可能性を探りたいと考えるのは過去の歴史からすると当然のことなのだ。

 しかし、本当に家庭向けテレビやプロジェクターを使って、劇場用のような見事な3D映像を実現できるのだろうか?(以下、次週)

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